あるゲイのサワライ マモル。

東京、会社員、ゲイ

79、2022年、僕の私の大量消費社会

~本~

●「女芸人の壁」(西澤千央)

文春オンラインの連載から気になって読んでいた。
ジェンダーバランスの動向が最も注目される界隈のうちの一角、芸人の世界。
山田邦子清水ミチコ、モリマン・モリ夫、オセロ中島青木さやか、Aマッソ・加納……など、豪華な面々のインタビューが収録されており、歴史が総ざらいできる。
女芸人の歴史は、すなわちテレビの歴史。それは日本社会の歴史だ。
ジェンダーの行く末、暗示する人honey
大好きな鳥居みゆきさんの聡明さも、あらためて指さし確認できた。ヨシ!

books.bunshun.jp


●「ジャクソンひとり」(安堂ホセ)

私は今、小説の作品づくりをして新人賞に応募していたりするのだが、
「こんな小説を書かれたら、俺もう書く必要ねーじゃん!」
と一瞬思ってしまった。それくらいおもしろかった。嫉妬したし、満喫した。
一晩寝て、いやそれでも自分にしか書けないものがあるはず、となんとか言い聞かせた。
芥川賞候補とのことで。来月1月に結果がわかるはずだけど、「ジャクソンひとり」っしょ。

とるよ……、あの人とるよ……(芥川賞を)。
万引きGメンふうに。

www.kawade.co.jp


●「我が友、スミス」(石田夏穂)

女性ボディ・ビルの大会に参加することになった会社員のお話。
ユーモラスな文体がとにかく好きすぎた。
そして楽しくドライブされていった先に待つ、筋肉と女らしさが独特なバランスで混じり合う大会の世界。おもしろかった。

www.bungei.shueisha.co.jp

 

~映画~

●「セイント・フランシス」

タブー扱いされ、不可視化されている女性の生理、中絶、産後うつをメインの軸に据えながら、ユーモアによって軽やかに物語が構成されているのがよかった。
賢い子役とそれに振り回されるうだつの上がらない主人公、という構図が好きすぎる。
おしゃまな女の子の、達者なセリフはいいね。
主人公がシッターとして働くことになる家庭は、レズビアンカップルが子を持つ構成で、ハッピーだけじゃない衝突する側面が、「セックスエデュケーション」での描写を思い出した。
LGBT的なニュースで華々しく取り上げられるカップルとか、幸せ一杯なイメージを想像しがちだけど、本作では生々しいところまで表現されていて、グッときた。
主人公の存在によって家庭に風が吹き込まれ、ふとしたやりとりから、互いの事情を労わり合うことになるシーンが、すばらしかった。最高。

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●「ベイビー・ブローカー」

終盤の観覧車のシーンがよすぎた。
カン・ドンウォンがIUの目元を手で隠すところ。
「俺たち捕まったら、こんな感じで目元にモザイク入れられるのかな?」
「今時はモザイクかからないよ」
冗談として二人で笑う。男がすぐに女の目元から手を戻そうとすると、その手を女が掴む。
涙を隠すために、かざされた男の手をそのまま保持している。
というシーンが強く印象に残った。

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●「由宇子の天秤」

今年で閉館になってしまった、飯田橋ギンレイホールにて鑑賞。結局1回しか行けなかったわけだけど、行っておいてよかった。
主演の瀧内公美さんがよかった。大豆田と火口のふたりでの演技から注目していた人。
男社会のマスコミで、ドキュメンタリー番組のディレクターを務める女の強さみたいなものがにじみ出ている感じ。男の同僚とも対等に仕事できる関係性を築きつつ、えらいおっさんに修正かけられることに対しては正義感から対抗心を燃やす感じもある。
ドキュメンタリー番組の中身として追っている、女子高生が自殺した事件の真相を追ううちに自分の家族も関係していき、真実が二転三転していく。
主人公は常に合理的で、その都度、最善の手を尽くしていくのだけど、引き返せないほうにどんどん進んでいき、ヒヤヒヤがおもしろくて、熱中して観た。
ラストの、スマホの動画撮影開始の音「ポン」が最高すぎた。

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~ドラマ~

●「シスターズ」(Netflix)

最高韓国ドラマ。
キレイゴトを言っていられない事情をそれぞれに抱える三姉妹が主人公。長女がひょんなことから大金を手にする1話から始まるおもしろさ。
韓国ドラマ定番である、イケメンお助けキャラ、悪そうな金持ち、激つよババアが周囲をかため、ダイナミックにストーリーが展開していく。熱中して観た。

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●「作りたい女と食べたい女」(NHK)

NHKで2週間のうちに集中的に、15分1話で放送されていたので、仕事で疲れた状態で見るのに適しており、めっちゃ癒やされた。
原作漫画は未読だったのだけど、とにかく春日さん役の方がすばらしすぎる。
記事をみたりすると、もともと俳優さんでなくミュージシャンの方だとかなんとか。

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●「エルピス」(カンテレ)

長澤まさみ最高。眞栄田郷敦の目力。鈴木亮平がえろい。

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~音楽~

●ゆっきゅん「物欲とパキラ」

ゆっきゅんの曲、どれも歌詞がよすぎる。
「買えないもの得るために洋服ポチってる」
「クレカポイント倍 愛 愛」
「肩幅甘く見ていたかも……」
とか。好き。
女友達との友情を歌った「日帰りで」も殿堂入り。最高。

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●LE SSERAFIM「ANTIFRAGILE」

負けへんで、な、強い感じがいい。
プロのバレリーナになる道からアイドルへと転向したKAZUHAさんがよすぎる。
KAZUHAさんが足を垂直に上げる見せ場がどの曲にも用意されており、そのたびに、コナンの服部平次の声で「か、かずはぁー!」と叫びたくなる。

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ジャニーズWEST「セラヴィ」

1年ほどWEST熱はおさまっていたのだが、11月下旬にふと目に入ったYouTubeのこの動画で、再燃した。
セラヴィかっこよすぎ。往年のボーダフォンとか、日本の携帯会社が元気だったころのケータイのCMソングっぽさを謎に感じる。「圧倒的な、通信速度」とかキャッチコピーを挟み込みたくなる疾走感と、なつかしい感じ。とか思ってたら、若いボカロPが作曲だったとわかり、自分の感性はなにも信頼できないと思った。
わかりやすくショート動画の宣伝にまんまとハマり、ライブのブルーレイディスクジャニーズWEST LIVE TOUR 2022 Mixed Juice」を速攻で買った。
ほんでAdoのうっせぇわっぽい曲歌ってるな~と思ったら、ちゃんとうっせぇわの作曲の人からの楽曲提供だとわかった。一勝一敗。
なんにせよ濵田崇裕さん最高。ウチ歌うまい人すっきゃねん。

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~舞台~

●「ネクスト・トゥ・ノーマル」(@シアタークリエ)

望海風斗さんの歌が聴けてよかった。内容もおもしろかったし楽曲もよかった。
息子役の甲斐翔真さんもよくて、この人これからミュージカル界で来そう!という謎の上から目線に。

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●「エリザベート」(@帝国劇場、@御園座

何回みるねん、という感じだが、見られる限りは見たいよエリザベート
今年もよかった。名古屋のチケットもとって親とも見たよ。
香寿たつきさんのゾフィーの歌が聴けてよかった。
そして甲斐翔真さんがルドルフ役で出演されており、こちらでもよかった!
かつての井上芳雄がルドルフ役で注目を浴びてそこからのステップアップを経てメインのトート役まで上り詰めたように、甲斐翔真さんがトートを演じる未来が見えた。
ミュージカルをわりと見てきたつもりだけど、いよいよ役者の未来が占えるレベルまで来てしまった。妙な感慨。
でもたぶん当たります。甲斐翔真はトートを演る。

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●「キンキーブーツ」(@オリックス劇場

こちらも大好きなミュージカル。
お友達がチケットをとってくれた幸運により、大阪まで遠征した。
最高!「Sex is in the heel」、「Raise You Up / Just Be」が好きすぎる。
城田優さんの圧倒的なフィジカル。最高。

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~展示~

●「フェミニズムズ / FEMINISMS」「ぎこちない会話への対応策—第三波フェミニズムの視点で」(@金沢21世紀美術館

年始の金沢旅行で訪問。よかった。
女性に背負わされがちな対価の支払われない労働のイラストを、透けたコインに描き光で照射する展示や、イケメン画や、社会性の象徴でもある顔を赤い布で覆って嫁に出す風習を逆手にとった、顔だけ隠れた男のヌード写真など、よかった。

www.kanazawa21.jp


●「母型」(@豊島美術館

夏の尾道~岡山~豊島旅行もよかった。
無印良品的な白っぽい服装に包まれた若者たちが受付やアートスペースの番人をしており、高齢化していそうな島の住人たちと好対照で、不思議な感じだった。ミッドサマーっぽさがあった。
表面上はやさしそうな、柔和な感じなんだけど、整った顔立ちの若者たちがこんな脱臭・消毒されたきれいな空間で満足できるもんなのか? という疑問がどこかでひっかかり、裏でえげつない、いかがわしいことやってんじゃねーか? という変な勘繰りをしてしまった。
真っ白で洞窟のようになっているアートスペースはすごかった。晴れていて暑い日なのに、涼しい風が吹き抜けていく影の空間。ぽっかり空いた穴から照射される光の輪っか。はためくビニールひも。フッ素加工でもされてあるのだろうか、床の小さな穴から時折水滴が生成され、ふるふるっと撥水性が見て取れる動きをして、床を這いまわる感じが生物みたいでおもしろかった。
他の来場客たちが、床に寝っ転がったりして、リラックスしようとしている感じを、客観的に見る私、という構図。他人に見られていることを意識しながら、どれだけ脱力するふるまいをできるのかと、試されている感じもあった。私は自意識が邪魔をして寝っ転がれなかった。寝っ転がればよかったかもしれない。
でも寝っ転がったとて、何か新しい境地を発見できなかったらどうしようとも思った。
考えすぎ。
とにかく会場側の、無印良品的な無害な衣服に身を包んだ、イケメンのお兄さんたちがどんなセックスをするんだろうか、ということだけが気になっていた。

benesse-artsite.jp


●「奇想のモード 装うことへの狂気、またはシュルレアリスム」(@東京都庭園美術館

建物がやはり、いい。庭園に立ち入れない期間みたいで鑑賞できず残念。
レディーガガ的なありえないハイヒール群がいい。派手なキラキラがキンキーブーツを彷彿とさせた。
別館の暗闇に浮き上がる展示が、以前に庭園美術館で別の展示を見た時と同じ興奮を呼び起こした。ブラックライトで浮き上がる純白の刺繍ドレス。素敵。

www.teien-art-museum.ne.jp

 

 


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2022年も最後、実家でコロナが発生し、帰省禁止令がでました。
東京で紅白見てもひとり。