あるゲイのサワライ マモル。

東京、会社員、ゲイ

日記170320~170326

2017年3月20日(月)

祝日の恩恵を受け、昼まで眠った。
何か映画か買い物か、出かけたかったのだけど、ボーッとしていたら夕方になったので、軽やかに断念。
申し訳程度に部屋の掃除をし、近所の喫茶店で茶をしばいた。

奥田亜希子さんの「五つ星をつけてよ」が面白い。ブログやインスタグラムのようなSNSを題材にしたものなど6つの話が入った短編集で、4編読んだところだけどどれもよい。特に表題作はネット上のクチコミの五つ星にまつわる話になるのだけど、結末が温かみのある着地で、すごく好みだった。

ネットの登場でコミュニケーションのあり方が急速に変化している世の中だけど、ネットツールが悪、という単純なものではなくて、要はいかに上手く付き合っていくかを考えることが大事、だと個人的には思う。
本作は決して直接的にネットどうこうを書いているわけではなくて、物語として、今の時代における人と人とのつながりを表現してあって、それがとても丁寧で、面白い。この作家さんの「ファミリー・レス」という家族にまつわる短編集もすごく面白かったので、目が離せない。

ということで、三連休が終わることを受け入れられない会社員でした。

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2017年3月21日(火)

「ゲイは変態」と面と向かって言われた。

別部署の人で、多分40代の男性、妙に話好きな人だった。2回目の打ち合わせを終え、前回同様長々と雑談が繰り広げられる中、なぜか多様性の話になり、
「まさか君、ゲイじゃないよね?笑」と唐突に聞いてきたので、曖昧に笑っていたら、
「いや〜、LGBTとかなんとかいってるけど、変態じゃない?差別とかじゃなくて、区別はした方がいいと思うんだよね笑」とかなんとか、そういうことを言い出した、気がする。よく覚えていない。

要は、会社が最近「多様性が大事」と急に言い出したことに対して、なんでもかんでも流行に乗って特別扱いすることはアホくさいからやめた方がいい、というようなことを言いたかったらしい。その後自分の娘の話になり
「今は女の子が強くて、なんでも決めちゃうのは女なんだって、君の世代でもそういうのあった?笑」とかすごく雑な関連トークを続けていたので、
「…自分のいた学校とかは、みんな個性が強くてそれぞれ好き勝手やっていた感じだったかもしれないですね〜笑」とヘラヘラ答えるのが精一杯だった。

なんとかその場をやり過ごしたが、とにかく混乱した。叫びたかった。でも会議室から戻る所は普段の居室くらいしかなくて、いったんトイレに行ったけど、ここで泣いたら居室に戻れなくなると思い、こらえ、そのまま仕事をしようとした。けど考えがまとまらず、作業が進まない。苦しい。でも、考えたら泣く。泣いたらおかしい、なるべく考えないように、作業に集中しようとすればするほど、気が散り、結局帰宅が遅くなった。

情けなくて、くやしかった。社会人になって、ブログを書いたり人と会ったり、自分なりに行動を起こして、がんばって自信をつけたつもりだったのに、いざという時に何も反論できなかった。

そして、こわかった。多分相手は差別的な発言をしたとはちっとも思っていない。身近にLGBTがいる可能性なんて、少しも頭にないのだと思う。悪気のない口調がとにかくこわかった。人の「当たり前」を変えるなんて、できない。

ヒソヒソ声にしてしゃべる姿が滑稽だった。1番言ってはいけない相手に直接しゃべってるんですよ、そう伝えればよかったと今になって思う。

全員から好かれるなんて無理だということは、理解しているつもりだった。けど心のどこかで、自分の厳しい判定基準で話のわかるヤツだと見極めた人は、必ず理解してくれるもんだと、過度に期待していた。

今回の人も、前回の雑談が面白くて、仲良くなれたと思っていた人だった。話せば通じる人だと。でも違った。彼にどういうふうに伝えればわかってもらえるか、まったく見当がつかない。人の「当たり前」を変えるなんて、できない。

そんな最悪の打ち合わせよりキツかったのは、居室に戻った時だった。普段一緒に仕事をする、同じグループの人たちを見た時、この人たちはどう思うだろうか?と考えてしまって、こわくてこわくてたまらなくなった。

2年かけて築けたと思っていた、自分の好意と、自分に向けてもらっているであろう好意の積み重ねが、もしかしたら一瞬でなくなってしまうかもしれない。そういうことを考えざるを得なかった。人の考え方を縛ることなんてできない。

いやだ。嫌われたくない。
そこらへんの人にどう思われようがかまわない。だけど、この人たちには、嫌われたくない。自分の好きな人たちだけでいいから、好かれたい。少人数でもいいから。そのために自分はがんばってきた。

でもそれって結局、誰からも嫌われたくないってことで、つまり無理ってことなのかもしれない。わからない。わからない。

帰り道、あまりひとけのないところを歩くのだけど、いったん気をゆるめてしまって涙が流れたら、止まらなくなった。本当にこわかった。傷つく言葉を言われた事実よりも、好きな人たちに嫌われる想像が止まらず、こわかった。
涙が出れば出るほど、自分が情けなくて、みじめで、くやしかった。こんな弱い人間、邪魔でしかない。そう思えて仕方がなかった。

自分の頭の中も「26歳の男は泣いてはいけない」とか「会社に必要とされる人間は強い者だけ」とか固定観念に支配されていて、それもたまらなくイヤだった。

ひととおり泣き終えて今思うことは、「自分の好みを受け入れること」「周りの信頼を築くこと」「常識にとらわれず自分の考えを信じること」など少しずつおし進めて、自信がつき始めていた所だったからこそ、こんなに激しく動揺したのではないか、ということ。
つまり逆説的に、少し自信がついていたことの証明だったということかもしれない。そんなことないかもしれない。もうどうでもいい。早く寝たほうがいい。おやすみなさい。

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2017年3月22日(水)

一晩寝たら落ち着いた。気がする。普通に会社に行く。

任された雑務がわりとめんどくさい方に転がり出してしまい、各方面に気をつかいまくりで疲れた。

一部の設計を担当した装置の出荷を祝ってなにやら儀式。なぜか機械に酒をチョロリとかけるのが恒例らしい。少しだけど自分の作ったモノがのっている製品が動くってのは、やはり感慨深い。

それにしても今日は出荷の準備のせいで駆けずりまわることになり、たいへん疲れた。寝る。

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2017年3月23日(木)

愛のままにわがままに、華麗に寝坊。
遅刻ではない最低限のラインには間に合ったが、自分のポリシーが守れず、朝から自己嫌悪を催した。

雑務の処理に悩む自分をみかねて、優しい先輩が論理的にアドバイスをしてくれたが、すでにひととおり考慮した内容だった上に余裕がなかったため、感情的に反論してしまった。大人げなかったと反省。

所属チームの人がみんな優しすぎて自分に激甘なので、最近はつい素でわがままに振舞ってしまう。うまく甘えられたなという手ごたえがある時と、度を越してやりすぎてしまったな・さすがに失礼だったなと反省する時があるので、気をつけたい。とはいえこの少人数チームの環境には本当に恵まれているなと再認識。

などとボヤボヤしていたら、どうやら4月後半ポルトガル出張に行くことになりそうらしい。まじか。初めてのお客さん先で、しかもめちゃくちゃクレーム満載な知らせが日々届いている所に乗り込むので、緊張する。ただ手練れの先輩2人に同行という形なので、いい具合にリードしてもらおう。とりあえずるるぶ買いに行くか。

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2017年3月24日(金)

ダイエットコーラが嫌いだ。

人工甘味料特有の後味の悪さ(ヌツァッとする感じ)が苦手で、結局そんなに美味しくないからだ。なんだか「カロリーを抑えつつも美味しいものを摂取したい」という、欲深い自分の底の浅さを見透かされてしまった気分になる。

今日はジンジャーエールダイエットコーラ的な位置付けの商品を間違って買ってしまったのだけど、しっかりダイエットコーラ的な後味の悪さがあり、コレジャナイ感がハンパなかった。

やはり体に悪いものを摂取してこその、あの刺激的な美味しさなんだから、正々堂々とノーマルのコーラ、ジンジャーエールを選んでいきたいと思う。「今さえ良ければそれでいい」という、ヤンキーみたいな刹那主義を貫いていきたい。

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2017年3月25日(土)

突き抜ける青空。近所のイオンモールの庭先では、いつにも増して大量のキッズ達が駆け回っており、若干ドレッシーな奥様たちと、スーツ姿のお父さん方もちらほら。なるほど、卒園式おわりにイオンでご飯、といったところか。これはいいハレの日だ。
叱るお母さんもおかまいなしに泣き叫んだり、道ばたに座り込んでストライキ決め込んだりと元気いっぱいで、「すくすく」という音が聞こえてきそうなくらいだった。

私はといえば町のパン屋さんで少し遅めの昼食を調達。カレーパンやウインナーのパンだけでは止められず、あんぱんやクリームパンなどの甘い系もここぞとばかりにトレーの上に乗せ、パン屋さんあるある「自分の胃袋の許容量を無視して大量に選びがち」が発動。
これがまたうっかり焼きたてだったりして、せっかくだしと一気に美味しくいただいて、しばらくしてから消化不良気味になり気持ち悪くなって、午後はひたすら豚のように寝込んだ。

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2017年3月26日(日)

先週に引き続き、読書会のイベントに参加。今回は著者ご本人登場回で、会場が沸き立った。カリスマの降臨である。
自分は大学院時代の鬱屈としていた時に、現実逃避として小説を読むことにハマっていったのだけど、一時期この方の恋愛小説を読み漁った時期があり、「世間の正解を気にしなくていいんだ」みたいに思えたことにとても救われたので、どうにもこうにもひたすらカリスマなのだった。

小説家の方はやっぱりトークがすでに面白い。魅力的な人柄がにじみ出ていた。色んな人に配慮の行き届いた考えをしているからだろうか。

今回の課題図書は、あまり馴染みのない50代のキャラが多く登場して最初読み終えた時は難しいと感じたが、2度読んだり読書会で意見を交わしたりすることで、理解が深まってよかった。
「世間のイメージする50代よりも、実際はもっと浮ついてる」ということが書かれてあって、それはつまり、「若さは美徳で、歳をとることはつまらなくなること」みたいな一般的な見方に縛られなくてもいいよという解放が示されてあって、すごくいいと思った。
「大人になったらもっと落ち着いてると思ったけど、そんなことなくて、まだまだ右往左往する余地があって面白いですよ」みたいなことを直接聴けてよかった。大人が楽しい、ということをしっかり提示してもらえるのは、何より希望だと思う。

好きな場面として、思いがけない人の提案による急な遠出で事態が好転する場面が面白かったと伝えたら、「突発的なことでしか人生観は変わらないですからね」とサラリとおっしゃっていたのがすごく印象に残った。

最後はちゃっかり思い入れのある古い文庫本にサインももらったりなんかして。ミーハーなもんですから。やっぱり紙派だな。電子書籍にはサインしてもらえないでしょ?満足。

思い切って行ってよかった。

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