読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

あるゲイのサワライ マモル。

社会人2年目、慣れない東京

28、焼き芋屋はなぜ潰れないのか?

「い~しや~♪きぃも~♪…おいもっ♪」
寒さが厳しい夜、どこからともなく聞こえてくるひょうきんな音色。
焼き芋屋さんの軽トラックから流れてくるこのメロディーは、日本の冬の風物詩ですよね。


残業を終えトボトボ歩いていたら、石焼き芋のフレーズが遠くでボンヤリ聞こえました。
は~、もうそんな季節か。明日から12月だもんな…。どうりでこんなに寒いわけだ…。
と、背中を丸めてコートの襟もとを正しました。
そして、それまでの考え事に再び集中するサワライ。

どう控えめに考えても会社の忘年会行きたくない…なんとかして仮病を…いや、根が真面目な自分に仮病はハードルが高い…ガチで風邪ひく方法は…こういう時だけ元気なんだよな…季節の変わり目は絶対風邪ひくのに、真冬にはひかないのなんでだろ~…昆布が…海の中で…だしが出ないの…なんでだろ……

とその時。脳内テツandトモが発動した、まさにその時。

曲がり角から突然軽トラックが飛び出してきたではありませんか!

いや正確には、サワライの最低な運動神経と考え事でボ~っとしていたことにより、目の前を横切った軽トラックを脳が遅れて認識したのです。
が、不思議と身の危険はまったく感じませんでした。
超低速で徐行する、焼き芋屋さんの軽トラックだったからです。
遠くでなんとなく聞こえるように感じていた石焼き芋の歌はすぐそこまで来ていたのです。


実はサワライ、焼き芋屋さんをこの目でちゃんと見たのが人生で初めてでした。
小さい頃から家の近所でさんざん焼き芋メロディーは聞いてきたのですが、品行方正なサワライは夜遅くに外を出歩くようなマネは決してしなかったのです。ていうか冬の夜とかさみーし外でねえよ!


そんなこんなで初対面の焼き芋軽トラに急激に興奮したのですが、あれ、これってどうやって買うの?おじさん走行中だよ?おれも並走すればいいのかな?徐行といっても車についていくの大変だよ?サワライ運動音痴だよ?走りながら財布の中の小銭探そうとしたら100%ころぶよ?いや、冷静になれ、おじさんだって車降りて芋とるんだから車停めるだろ。そうだ、車とめなきゃ。え、タクシーみたいな感じ?ヘイ、タクシー、みたいな?ヘイ、ヤキイモ!みたいな?え恥ずかしくない?それ恥ずかしくない?てか夕飯前だよ?芋、腹にたまるよ?いやもうなんなら芋だけで…


とか考えているうちに、あっという間に焼き芋トラックはサワライを追い越し、闇夜に消えていってしまいました。


サワライはくやしくてたまりません。
何も考えずに脊髄反射で「焼き芋くださーい!」と叫べばよかった…。後悔。

そして同時にとても不思議です。
どこに出没するかもわからない焼き芋屋さんが、出会えても突然のことだとアタフタしてしまう焼き芋屋さんが、夕食時に腹を余分に膨らませてしまいかねない芋を売る焼き芋屋さんが、なぜ潰れないのか?

 

今日もどこかで聞こえる、ちょっぴり不気味なメロディー。
「い~しや~♪きぃも~♪…おいもっ♪」

f:id:sawaraimamoru:20151130233327j:plain