あるゲイのサワライ マモル。

社会人3年目、あてどなく東京

22、嬉々としてきき湯

今週のお題「愛用しているもの」

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冬が近い。迫りくる寒さに負けまいと、私は毎日お湯をはって律儀に入浴している。

というか夏だろうが猛暑日だろうが、年中お風呂に入る。
愛用品の「きき湯」という入浴剤を入れて、シュワシュワする湯舟にその身を浸し、至福の時を過ごすのだ。

 

最近のトレンドをみると、特に一人暮らしの若者の中で、シャワーを浴びてすます人たちが増えてきているようだ。周りの声を聞いてもネットで軽くデータを検索しても、そういう気運が高まってきている。だって楽チンだもんね。

それでも私はお風呂派をつらぬく。
その方が清潔だから?美容のため?
決してそういう意識の高い理由ではない。

肩こりを緩和するためである。
え?そんなジジイ的な理由?お前20代じゃなかったっけ?
といった感想ももっともであるが、実際問題どうしようもなく肩こりが激しい体質なので、ちょっとだけ目をつぶってほしい。

肩こりって、実は現代科学でもまだ解明できていないことがあったりする神秘的な現象なのだけど、要は血の流れをよくすることが改善への近道らしい。
そこでマッサージとか入浴によって、圧力かけーの温めーので血流を促進させることが重要だ、とのこと。

 

自らの若い肉体をむしばむ肩こりという悪魔を追い払うため、私はお風呂派に入信した。

お風呂はいつだって優しかった。
バイトで疲れて帰ってきた体を、海のように包み込んでくれた。
卒業論文に嫌気がさしてとがった心に、さわやかな風が吹き抜けた。

 

やがて、私は入浴剤を買うようになる。
人間の欲は果てしないもので、もっと疲れがとれないものか、もっとリラックスできないものか、と、さらなる極楽を目指し始めたのだ。

入浴剤は血流をよくする成分を含んでおり、その上いい匂いがして気が安らぐ。
一度使い始めると、ただのお湯だけの湯舟には満足できなくなっていった。

 

そうして今年、私は会社員になった。
新しいことを始めるのはなかなか疲れることが多く、ストレスを感じる日も少なくない。
もっといい入浴剤はないか、とドラッグストアを探し回り、冒頭の「きき湯」と出会ってしまった。

運命だ、と思った。
だってパッケージに、デカデカと「腰痛・肩こりに」と書いてあったから。
「for you」と書いてあったのだ。
ちょっと値段高い、なんて思う間もなくレジへと持っていった。

 

それからのことはあまり覚えていない。
「温泉科学のツブが効く」というキャッチコピーを信じて、私は毎日きき湯に浸かった。
けっこうすぐ中身がなくなってしまうのだけど、間髪入れずにドラッグストアに詰め替え用を買いに行く。それくらい、のめり込むようになった。

きき湯の効き目は本当にすごかった。デスクワークでカッチカチに固まった肩が、翌朝ぐるぐるクロールの動きを余裕でこなせるようになるような、夢のアイテムだった。

たぶん、実際の効能もさることながら、精神的に作用しているところが大きい気もしている。
「きき湯」というわかりやすい名前。値段の高さ。そして、勢いのあるシュワシュワ。

普通の入浴剤よりも、お湯に投入した時に炭酸ガスがすごい勢いで発生して、「お前を癒してやるから!」という強い意志を感じるのだ。
圧倒的な信頼。これが、私が「きき湯」を愛用する本当の理由かもしれない。

 

なんか、ここまで読み返してみると、麻薬かなんかに依存していった人の体験記みたいになってしまったのだけど、市販のただの入浴剤の話なのであしからず。
ドラッグストア違い、とかではない。

 

でもまあ、深刻さは近いものがあるかもしれない。
その証拠に、なんだか最近愛用しすぎて「きき湯」が効かなくってきている気がするのだ。

「きき湯」が本当に効かなくなってしまったら、何に頼っていけばいいんだよ…。

 

恐ろしい未来には目をつぶって、今日も私はお湯をはって「きき湯」を投げ入れる。
シュワシュワと湧き上がる無数の泡たちだけが、確かな希望だ。