あるゲイのサワライ マモル。

東京、会社員、ゲイ

70、2017年、僕の私の大量消費社会

もう年末!?まじ!?

というおなじみの焦りとともに、この1年のエンターテイメント消費行動の、各分野BEST3を記録しておきたいと思います。
完全に個人の主観。好きを集めるってめっちゃ楽しい!金かかる!

電気・ガス・水道・スマップと言われるほど、日本のインフラであった国民的グループが電撃的に解散したかと思いきや、新しい地図とかいってガンガンネット媒体に進出したりと、時代の変化ハンパない!振り落とされないように、自分もガンガンついていきたい!ガンガン消費していく!
1年あっというま。あれからぼくたちは何かを信じてこれたかな・・・

 

~本~

www.kawade.co.jp

お子さんを出産された小説家の方の子育てエッセイ。
え、子育てエッセイお前が読むの?って感じかもしれませんが、著者の山崎さんのジェンダー観が好きなので、すごく気になっていたんですよね。
男らしさ、女らしさ、そんなものに縛られる必要はなくない?っていう感じ。
「赤ちゃんの性別も書く必要がない、この子の性自認もまだわからないし。」といって最後まで性別が出てこないという潔さ!しびれる!
普通に出産から子育ての実用的な知識も得られるし、結婚や出産、それにまつわる男女間や社会との関わり方について、山崎さんが非常に丁寧に考えて言葉を連ねていて、とてもよかった。
どの考え方が良い、悪い、ではなく、多様性を重んじるスタンスが最高。
結婚の有無、子育ての有無、仕事の有無、性別、年齢関係なく、色々な人に読んでほしい一冊。

 

  • 「星の子/今村夏子」

publications.asahi.com

新興宗教に染まっていく両親の元で育つ女の子の話。
特筆すべきは、そのニュートラルな視点。
主人公が生まれてからだいたい中学生あたりまで、女の子の視点で語られていくのですが、新興宗教にハマることが良い悪いという書き方ではない。
「金星のめぐみ」という水を珍重する両親が、学校の先生の目に不審者として映ることもあるということ、そして、その人たちは自分の大切な両親であること、でもやっぱりその場で先生には言い出せないこと、主人公の視点で感じることができます。
遠い世界だと思っていたことが、誰の身にも起こりうることとして感じられる作品。

 

  • 「浪費図鑑~悪友たちのないしょ話~/劇団雌猫」

www.shogakukan.co.jp

本文の説明を引用すると、「(オタク女たちの)浪費(事情を紹介する)図鑑」とのことで、アイドルや若手俳優、ディズニーなど、様々なジャンルの第一線で浪費されている精鋭10名ほどの告白集と、WEB上で2000人(!)のアンケートをとった浪費データ(収入・支出・貯金!)などが載っている、非常に面白くて赤裸々な書物です。
劇団雌猫と名乗る本の作者4人組も、各界に精通するオタクであり、少し前からツイッター上での精力的な活動を拝見していたのですが、浪費にまつわる同人誌を発行したと思ったら瞬く間にネット上で話題になり、このように商業誌として出版され、様々な媒体でアツい本として取り上げられるという快進撃で、めっちゃあこがれるし嫉妬した笑。
お金も距離も時間も超越する、その熱意あふれる文章はどれも面白く、刺激を受けて今年は舞台観劇の回数が増えたな~。「この舞台を観れるチャンスは今しかないかもしれない!」という笑。
浪費という言葉のイメージは悪いかもしれないけど、仕事でガンガン稼いで趣味で活力を生み出す、そういうエネルギーサイクルはめっちゃ健全だと思います。
劇団雌猫さんの同人誌第3弾「東京」も最近出たとのことで、気になりすぎる!こっそりネットで入手するつもりです。

 

~映画~

  • 「ドリーム」

sawaraimamoru.hatenablog.com

ブログにも書いた、爆走ハイヒール宇宙映画!

 

  • 「ギフテッド」

sawaraimamoru.hatenablog.com

生意気な天才美少女を肩車して優しく諭す影のあるイケメン!
これもブログ書いた!

 

miss-sloane.jp

銃規制法案をめぐって活躍する敏腕ロビイストの女性が主役。ロビイストってなに、って感じでしたが、どうも選挙戦で特定の政治家に有利に動くようにしたり色々な根回しをしたりする職業のことらしい。
とにかく知能戦で、セリフの密度が濃いし話の流れが速くてついていくのに必死でしたが、面白かった。
銃規制を訴えるキーパーソンが襲われそうになって、ちゃんと登録した銃を持つ市民に命を救われて、「じゃあ銃必要じゃん!」って逆境になってしまう展開など。

 

~ドラマ~

  • 「カルテット」

www.tbs.co.jp

第1話から高橋一生が「からあげにレモンを一度かけてしまったら不可逆」とか言い出す最強ドラマ。
松田龍平が、彼女ではないが部屋でともに夜を明かしちゃったりする同僚の結婚式で演奏するアヴェ・マリアWhite Love
内なる火を心に灯し、赤裸々に泣く演技をする満島ひかり
任意同行の車中、「頭の中に、思い出したい音楽がたくさんあるんです」といってラジオを止めてもらう松たか子

 

www.tbs.co.jp

宮藤官九郎さん脚本の間違いなさ。
夏帆さん演じる姫が、伊勢谷友介さんの策略で冤罪を被り、たどり着いた刑務所で出会ったのは小泉今日子さん率いるお節介おばさん軍団。夏帆さん以外のおばさんたちが先に出所して伊勢谷友介さんを復讐がてら誘拐したところから第1話が始まり、そこから徐々に過去・真相が明らかになっていく斬新な時間軸で、面白かったな~。ぶっとんだキャラ設定ながら、ちゃんと各俳優にマッチした役柄になっていたのは、クドカンの力も役者人の力も両方合わさってのことなんだろうな。様々な名言がどんどん飛び出して最高でした。
冷静に、冷静に…。

 

www.nhk.or.jp

過保護のカホコ竹内涼真さんにハマってしまって、すでに終盤に差し掛かっていたにもかかわらずNHKオンデマンドで一気見して光の速さでリアルタイム視聴に追いついたことでおなじみの朝ドラ。
1964年の東京オンリンピックあたり、茨城の田舎から上京した有村架純さんの奮闘。
主人公が特別なにかを成し遂げるわけではないけど、逆境にめげず、卑屈にならず、素敵な人たちと楽しく暮らすというストーリー。え、その話おもしろいの、ってあらすじになっちゃったけど、そこが脚本のすごさなのか、めっちゃおもしろかったんだよなあ~…。キャラがそれぞれよかったんだよなあ…和久井映見さんとかシシドカフカさんとか素晴らしかったし、竹内涼真さんとか竹内涼真さんとか…笑
や、朴訥とした昭和のエリート大学生にめっちゃハマった演技をしていらして、しかも有村さんとの王道なラブ展開で、少女漫画的なキュンキュン映像が満載で複数回再生を繰り返したのはいい思い出。

 

~音楽~

  • 「愛を伝えたいだとか/あいみょん」

youtu.be

ちょっとなつかしい感じのするサビのメロディーにグッときた。高音の張った声の感じが好みなあいみょんさん、22歳のシンガーソングライターとのことで、その若い才能への謎の嫉妬も込みで、今年1番聴いた気がする。

 

youtu.be

スミノフのCMでテレビでも流れてたこの曲。抑揚の少ない特徴的なフレーズが繰り返されるだけなんだけど、背後の効果音?や楽器がどんどん加わっていって、めっちゃアガっていく。
昔は1番と2番の歌詞が同じなんて手抜きだ!みたいに思うほど歌詞ぐらいしか変化を識別できなかったけど、最近は背後の楽器やパーカッションのリズムの刻み方も気になりだして、そういう楽しみ方できるようになってきたのが嬉しく思います。
tofebeatsさんも同い年とかで才能に嫉妬案件。

 

  • 「後悔/柴田聡子」

youtu.be

tofebeatsさんがテレビで薦めていて気になった曲。すごくかわいい感じの曲調と、本人の顔のアップがひたすら続くMVが印象的。
「ああ、きた、あの曲がきた」で始まり、「きのう名前を変えたよ きっちり外国風のに」とか、「ああ、バッティングセンターでスウィング見て以来 実は抱きしめたくなってた」とか、歌詞が面白い。


~展示会~

  • 「怖い絵展」

www.kowaie.com

平日も3時間待ちの情報、とはいえ怖い絵展。
渾身の有給発動で朝9時前に上野到着するも、すでに行列。
1時間待ちこそすれ、増列の一途だったので、最善は尽くせたかな。
企画者の本で主要作品の背景を予習していき大勝利。
処刑の絵は巨大で見ごたえMAX。

 

  • 「ソール・ライター展」

www.bunkamura.co.jp

写真の展示はなかなか経験がなかったのですが、楽しめました。
モノクロっぽい雪道にさす真っ赤な傘とか、色合いも面白いし、窓ガラス越し、反射など、様々な光の可能性が写真という形におさめてあってよかった。

 

  • 「パリ・グラフィック ロートレックとアートになった版画・ポスター展」

mimt.jp

19世紀末のパリで、複製や情報伝達の手段でしかなかった版画が芸術の域まで高まっていった時代の作品がたくさん。
すごく華やかで、版画の特性なのかシンプルな輪郭のポスター作品群が見ていて楽しかったな。
色づかいがかわいい作品のマグカップやスマホケースなんかも買っちゃったりして、いいカモです!消費者の鑑!
でも、最近思うのですが、そこらへんの雑貨店で小物を探すよりも、美術館のおみやげショップで小物を探した方が、かっこいいデザインに出会える確率が高いんじゃないか、という説!
美術の展示をなんとな~く眺めて、最後のおみやげコーナーでグッズを物色。すごくオススメの消費形態です。

あ、あとフェリックス・ヴァロットンという方の黒1色の版画のシリーズが面白かった。
めっちゃ退屈そうな表情の夫婦の並んだ「取り返しのつかないもの」という題名の作品が、版画の黒ベタが効いていてすごくよかった。

 

 

~ミュージカル~

 

youtu.be

不朽の名作レミゼ。ついに観ることができました。
やっぱりミュージカルは革命モノに限る、とはあくまで個人の意見。
怒れる群衆が横一列に並び、圧倒的な歌で感情を訴える光景が、とても好きだな~。
比べるべきものではないけど、自分の日常の抑圧からの解放みたいなものを勝手に重ねる。
レミゼ観た翌週、仕事中にあやうく反旗をひるがえしそうになったりしたとかそうでないとか。♪戦う者の歌が聞こえるか?
 

 

  • 「天使にラブ・ソングを…」

 

youtu.be

最高ミュージカル天ラブ!
主役が若い設定だったり、全曲映画と違う曲だったけど、音痴な聖歌隊がソウルフルなゴズペル隊に成長する感じ、1番気弱なシスターマリーロバートが、いや結局くそ歌うまいんか~いってなる場面とか、神。
神が1番アツいから他の男なんて相手にしない、みたいにシスターが歌うの、最高すぎる。

 

 

youtu.be

まさかの5列目で表情バッチリ!
生き仏ローリー様のギターソロからの生演奏と、みんなの歌とダンスにノリノリ、ペンライト炸裂。
小池徹平ソニンの漫画から飛び出したようなかわいさ。
ISSAの化け方、武田真治のサックス筋肉。
そして古田新太のカリスマ性にひれ伏した。

 


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後半スタミナ切れて感想が雑に!!!でもなんとか挙げたぞ!

去年に引き続き、よい消費ができたと思います!!!
来年もいい1年でありますように!


最後のエンタメ・メインイベント紅白!!!

テレビの前で正座待機!!!

 

sawaraimamoru.hatenablog.com

61、オブラートに包まれたなら

お正月特番でやっていた、「ご本、出しときますね?」という番組が面白かった。

 

www.bs-j.co.jp


去年BSでレギュラー放送していて、毎週かかさず録画して観ていた熱心な視聴者なんですが、1クールで終わってしまって残念だったんですよね。
そこからのこの特番だったので、そりゃ録画するっつーもんです。

読書芸人としても知られるオードリーの若林さんがMCとなり、毎回小説家をゲストに呼んで、あまり知られていない作家の生態に迫るトーク番組なんですが、まあ~面白かった。


作家さんの豊かな語彙力によって編み出される斬新な言葉づかいから、日常のモヤモヤのヒントがみつかったり、お腹が痛くなるくらい笑ったりする。

小説って、説得力を持たせるために人間のあるあるが詰め込まれていると思うんですが、人間あるあるを駆使する作家さんはみんな、ツッコミ目線が備わっているような気がします。

ボケとツッコミの役割の話というよりかは、人間の行動の笑いのポイントがわかっているというか。見逃してしまいそうな些細な事も上手にすくって言葉にしてくれるというか。

それでいて、作家さんと交流のある若林さんがお茶目なエピソードを知っていたりするので「作家さんって頭いい人ばっかだと思ってたけど、意外とバカなんだね笑」とかいう話も聞けちゃったりして、それもまたfunnyというよりinteresting、みたいな!?cleverな笑い、というか!?(uza)

 

今回のお正月スペシャルも、面白トーク満載だったんです!
そしてその中で1か所、どうしても「オレも話に加わらせてくれー!」という場面がありました。

蹴りたい背中」で芥川賞を授賞された綿矢りささんが、気になった去年の流行語としてPPAPを挙げて、

「PPAPは、(突き刺して合体という)性的なニュアンスが感じられるから流行ったという誰かの話を聞いて、何かネーミングとかの参考にしたいと思った笑」

というようなお話をされていて、若林さんがためらいながら、

「でもちょっと違うかもしれないけど、家電のデザインでも感じる時ありますもんね!?USBメモリ差し込んでる時とか、それ意識して作られてるんじゃないかって…。」
と発言されて、

「そこまでいくと発想が中学生ですよ笑」とたしなめられていました笑

 

番組のトークはそこでオチがついて次の話題にさっと移っていったのですが、サワライはここを少し掘り下げたい!なぜならメーカーで電気的な接続とかを設計・開発しているから!

電気部品を接続する箇所ってコネクタとか呼びますけど、色んな種類から選定して、使用する部品ごとに適したコネクタを考えることも重要な設計作業なわけです。

巨大な装置ともなればめちゃくちゃ部品が多くて、そいつらを適切につなぐケーブルを作ることは基本的だけど、とても大切な作業。新人サワライはこの2年がんばって取り組んできました。その間ず~っとモヤモヤしてきたことがあります。

 

コネクタは絶対に「凸」と「凹」で1セットになっているんです。
差し込む側と、迎え入れる側。

これをエンジニアは「オス」と「メス」って呼ぶんですよ!!!

 

えーーーー、露骨!!!!!!

突起物と、穴のものが、ペアだからって、確かにわかりやすいけども…。

 

くれぐれも言っておきたいのですが、周りの先輩エンジニアの方々は、まじで平然と記号として「オス」「メス」と言い分けている感じで、ニヤけながら言ったりとかはしないんです。


初めて教わる時も、何事もないかのように、あ、というかわざわざ教えてもらったりすらしてないかも。
「そこのメスのコネクタとって」って言われたから、あ、はいこっちですねってなった気がする。
でもその数秒後意味をちゃんと考えて、あれ今すごいことサラっと言わなかった?性器連想させたよね今?みたいな、時間差で、ジワジワ来ました。
それ以来、周りがあまりにも平然としてるもんだから聞くに聞けなくて、話題にもしづらくて、もうすぐメーカー勤め2年が経とうとしていますが、ずっとモヤモヤしてるんですよね…。
オスのコネクタ、メスのコネクタ、別に普通に言えるし照れたり口ごもったりはしませんが…。その都度、頭の中で性器を経由している、未熟者でございます…。


なにぶんウブなもんですから…。

 

いやでもこれ、こんなにもシンプルに本質をついた呼び名もないですよね。
その通りだもん。

そして、物理的になにか2つの物をがっちり結合させるためには、凸と凹ではめ込む以外ないもんね。ただの合理的な話ですよね。深い意味は、本当にまったくない、はず。

 

あ、ちなみになんですが、電気的設計の観点からいうと、電気を供給する電源側のコネクタはメスにして、つなぎたい部品から電源に続くコネクタの方を、金属の突起が出ているオスにするという基本ルールがあります。
電源側で金属の突起がとび出ていると、間違って感電とか、ショートさせちゃうと危ないですからね。
電源コンセント(壁側)とプラグしかり、パソコンのポートとUSBメモリしかり。
おばあちゃんの知恵袋。


この点においては、生物的なオスとメスとは役割が逆、みたいなイメージgげふんげふん!!いやだから下ネタ苦手なんだってば!!!清純派なんだから!!!!言わすなよ!!!!

 

なんか他にいい呼び名ないかね…。「ツッパリ」と「控えめ」、とか…。いやなんか全然違うな…。

他にもね、カタカナで呼び分ける呼称とか見かけたこともありますけどね、基本現場で呼ぶときはね、オスとメスはわかりやすいからね…。短いからね…。絶対間違えないしね…。設計ミス防止はめっちゃ大事だからね…。しょうがないよね…。

 

この先もたぶんサワライは、このなんともいえない照れを抱えながらずっと仕事していくんだと思います…。
つーかみんな絶対頭の中で性器経由してる!!
そうだろこのムッツリスケベどもが!!!!

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59、2016年、僕の私の大量消費社会

お久しぶりです!サワライ マモルです!

 

光陰矢の如し。加齢とともに年々加速する「今年もあっという間だったね」感。

サワライ的には毎度のことですが、2016年、今年もなんかオロオロしてるうちに過ぎちゃったなあという印象です。

 

仕事、うまくできないし、彼氏、微塵もできないし、去年に引き続きウロウロしてたサワライが、ギリギリのところで正気を保つことができたのは、エンターテイメントのおかげでした。

 

 

というわけで、サワライを救ってくれた2016年のお気に入りご機嫌コンテンツを以下に紹介していくぜ!独断と偏見だぜ!今年もいっぱい好きが増えました!

 

 

 

~小説~

 

●「美しい距離」

 

美しい距離

美しい距離

 

 

 不治の病の妻とその夫の日々。難病ものって、お涙頂戴の感動作で片付けられてしまいがちですが、この作品はもっと淡々としています。おおげさじゃないからいい、というか。それは決してうすっぺらいわけではなく、静かにしっかりと、死を自分たちのものとしてとらえていく夫婦の姿が美しく描かれていて、すごくよかった。

最後に、妻の死により妻との距離が日ごとに離れていくことに対して、それもまた乙なものだと、夫が肯定する描写がすごく印象に残る作品。

 

 

 

●「コンビニ人間」

 

コンビニ人間

コンビニ人間

 

 

大学卒業後就職をせずに、ずっとコンビニでバイトを続ける36歳未婚女性の話。幼い頃から周りの人の「普通」に寄り添えない彼女は、完璧なマニュアルが存在するコンビニでだけ自分が世界の「部品」になれると、コンビニのために眠り、コンビニのために食べる生活を送る。そんな極端な彼女の姿に、世間の常識からの解放をみるか、あるいは狂気を感じるか…

身近なコンビニを舞台に、常識や価値観を激しく揺さぶられる楽しさを味わえます。

 

 

 

●「みかづき

 

みかづき

みかづき

 

 

 昭和から平成にかけて、塾産業とともに歩んできた家族三世代の大長編。

キャラがみんなめちゃくちゃ魅力的で、教育をめぐる展開がとにかくアツいんです。

気の強い女性にタジタジなおおらかな男の構図とか、個性豊かな三姉妹のそれぞれの活躍、超然としたかっこいいおばあちゃんなど、好きな人物像が次々に出てくるのがお気に入り。

 

 

 

~映画~

 

●「怒り」

映画『怒り』公式サイトwww.ikari-movie.com

57、「怒り」にゆれる喜び - あるゲイのサワライ マモル。sawaraimamoru.hatenablog.com

 

ブログも書きましたが、人を信じること、生々しい感情が描かれた作品。心がグワングワンに揺さぶられる骨太な仕上がり。妻夫木くんに恋をし、宮崎あおいの幸せを祈る映画。

 

 

 

●「シン・ゴジラ

映画『シン・ゴジラ』公式サイトwww.shin-godzilla.jp

 

怪獣映画というか、会議映画でした。

未曾有の大災害発生時に、国の頭のいい人たちがどのように動くか、というのを、エヴァ的なスピード感ある画面の切り替わりでテンポよく展開していく心地よさ!豪華俳優陣をエキストラ的に使ったり、街の作り込みがすごかったり遊び心も満載で圧倒的なエンタメりょくでした。

 

 

 

~ドラマ~

 

●「ゆとりですがなにか」

ゆとりですがなにか|日本テレビwww.ntv.co.jp

 

岡田将生松坂桃李柳楽優弥演じるゆとり世代が、うるせー馬鹿ヤローゆとりだなんだ関係ねえんだよといった感じで、宮藤官九郎脚本特有の独特な長い感情的なセリフをまくしたてる感じが大好きでした。うっかり岡田将生のよさを悟ってしまった作品。ヒロインの安藤サクラさん最高。

 

 

 

●「逃げるは恥だが役に立つ

火曜ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』|TBSテレビwww.tbs.co.jp

 

個人的に自信をなくしていた秋口から冬にかけて、毎週楽しみに、心の支えにしていたドラマ。

派遣切りからの就職としての偽装結婚、からの本当の恋。現代が抱える社会問題の捉え方が絶妙に丁寧で、職業観とか、特にジェンダーの考え方が大げさでなくフラットで、すんごくよかった。

物語に散りばめられた色んな番組のパロディも最高に面白くて、キュンとするシーンも満載で、最高&最&高でした。

星野源、別にそんな好きじゃないんだけど、なんか、みちゃうんだよねえ…いや、別に好みじゃないんだけどなあ…という謎の言い訳を続ける自分のちっぽけな存在を意識せざるをえない作品。

 

 

 

~歌~

 

●「Have a nice day / 西野カナ

 

Just LOVE

Just LOVE

 

 

 4月~9月のめざましテレビのテーマソングでしたね。生まれながらのめざましテレビ派な自分の、会社への行きたくなさを見事に払拭してくれる最強おはようソング。ウキウキなメロディーとともに繰り出されるかなやんの底抜けポジティブ歌詞が最高。

トマトが嫌いな歌でレコ大おめでとうな西野カナやんは、ホントに歌がうまいんすよね。YouTubeでの強いかなやんのTrue Colorsも好き。

 

 

 

●「ともだち with 小袋成彬 / 宇多田ヒカル

 

Fantôme

Fantôme

 

 

 宇多田ヒカルの復帰アルバムはみんなチェキラウトした?サントリーのCMの道、も大好きなんだけど、やっぱりゲイのことを歌ったとされるこの曲をいっぱい聴いたなあ。触りたくて仕方ないあなたとは、やっぱり友達になれないなあ、とのこと。イントロとアウトロのメロディーがめっちゃかっこいいんだよね。

 

 

 

●「恋 / 星野源

 

恋

 

 

 言わずと知れた最強ドラマ逃げ恥のテーマソング。

ダンス習得の日々。

主演のガッキーの激キャワな恋ダンスもいいけど、星野源が歌番組で歌う時のバックダンサーのキレキレな恋ダンスも大好き。

てかこの曲めっっっちゃよくない!?「ただ腹を空かせて君の元へ帰るんだ」のとことか!好き!

 

 

 

~ミュージカル~

 

●「1789」

帝国劇場『1789 バスティーユの恋人たち』www.tohostage.com

 

46、革命日和 - あるゲイのサワライ マモル。sawaraimamoru.hatenablog.com

 

ブログにも書いたフランス革命のミュージカル。神田沙也加の声の力・健気なヒロイン像、小池徹平の少年漫画的ヒーロー像、ソニンの情念、農民の魂からの訴えを表す合唱・群舞。もっかいみたいなあ、いつか再演してくれないだろうか…

 

 

 

●「キンキーブーツ」

ブロードウェイミュージカル「キンキーブーツ」公式サイトwww.kinkyboots.jp

 

三浦春馬ドラァグクイーンを演じた異色作。三浦春馬がもはやドラァグクイーンでしかなく、圧倒的な強さ・美しさがかっこよかった。女性性と筋肉の両立、が斬新で、でもめちゃくちゃ説得力のある強さだった。

 

 

 

●「RENT」

ブロードウェイ・ミュージカル『RENT(レント)』20周年記念ツアー来日公演rent2016.jp

 

今週みてきました笑

マイノリティーや麻薬中毒エイズなどに焦点を当てたブロードウェイミュージカル。

初めて海外キャストのものを観てみましたが、歌かっこいい!最高!

舞台の両サイドで字幕がちゃんと出るんですね、慣れないとちょっと忙しない笑

なんかのCMでもおなじみの「Seasons of Love」が本当にいい歌すぎて、ソロの人うますぎて、鳥肌ののち涙。よかった。

 

 

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という感じでした2016年!!

来年も色んな楽しいものを、俗っぽく消費していきたいなあ!

スマップがいなくなっても、強く生きていくからね。

 

 

やべえ、紅白始まる!!消費せねば!!

 

53、わたしの読解力は530000です

読書会に参加してきました。

好きな小説家のツイッターで知った催しで、一つの作品につき2日でワンセット。どうやら毎月異なる作家さんが取り上げられているみたいでした。

著者ではないライターの人が進行となって2時間みんなで本の話をして、日を置いた2回目の開催で著者本人が加わって直接作品の話が聞けるという、ラグジュアリーなイベント(!)。


自分はここ2、3年で読書が急速に趣味になってきたけどあまり周りの人と感想を言い合う機会も少なかったし、安くはない金額を払って参加する猛者たちや文筆業の方と本の話ができるのはなかなか貴重だと思い、チケットを申し込んでみました。

↓読書が趣味だと主張した回。

sawaraimamoru.hatenablog.com

sawaraimamoru.hatenablog.com

 


そうして迎えた初参加の今日。緊張して横浜のみなとみらい近くのビルへと潜入しました。
なんか勝手に読書会に根暗なイメージを持っていたけど(失礼)、会場の雰囲気も参加者の雰囲気もおしゃれな感じでした。十数人ほどの集まり。

簡単な自己紹介と、参加理由や課題図書の感想を順番に述べていきながら、進行のライターさんが質問なり補足なりを加えていく形式でした。

題材が恋愛小説だったんですが、女性参加者がヒロインに共感できたできなかった、相手の男性像はちょっとデリカシーがない、みたいな話をしていった流れで、「男性目線でこの身勝手な男のことに関してはどう思いますか?笑」と聞かれた時、ちょっと迷いましたが「自分はゲイなので、ワイルドさに少し惹かれました笑」と正直に言ってみました笑

恋愛小説が題材の時点で、自分の感想を言う際にさすがに性的志向を隠すのはナンセンスだと思ったし、高い金払ってんだからコソコソする必要はない、聞かれたら言っちゃおうと思っていたので、まあ、わりとスッと、でもやっぱり緊張して早口になりながら、しどろもどろで感想を言った形になりました。
けっこうテンパっていたので周りの人の表情をしっかり見る勇気はなかったのですが、まあイレギュラー感は出たものの、なんだかみなさん温かく受け取ってくださった雰囲気だったように思います。ホッ。笑

そのあと別に、「じゃあゲイ目線でどう思いましたか?!」なんてズケズケ聞いてこられもせず、けれどもゲイとして発言することをちゃんと聞いてもらえる場に参加できて、とても嬉しかったです。ああ、でも聞かれたら聞かれたで普通に答えられるかな、とも思います。


初対面だらけで、あんなに本のこととか、本を通じて感じる感情の動きについて熱心に語り合えるって、わりと奇跡的なことだと思うし、今までになかった経験で、とても面白かったな。
他の参加者の方々の読み方や感想がとても新鮮で、どれもわかるわかる、って感じだし、面白いし、いい時間の共有だったと思います。
ゆきずりの、その場だけの関係だからこそ深い話ができたところも、あるかもしれません。笑
イベント終了時、わりとみんなすぐ席を立って次々に会場をあとにしていて、手練れのスパイたちが会合を終えて「散ッ!!」って感じで散っていくイメージが思い浮かんで面白かったです。笑
自分の知らないところであのあとみんなご飯とか行ってたのかもしれないけど。笑
まぁそこは余韻として、知らないでおこう。笑
誘われたらみんなでご飯とか行ってみたい気もするし、なかったらなかったでドライに解散するのも全然気ままでいいし、もうとにかくストレスフリーでよかったな。


次回の著者本人回はもちろん参加するし、来月の大好きな作家さんの回も参戦予定!!
自分なりに読書の趣味をたいせつにしていきたいとおもってるよ、という話!以上!

 

↓関係ないけど最近食べて度肝を抜かれた銀座の高級チョコパフェ。

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50、ヘルシー・カルチャー・マキシマム

5月末の金曜、1年の業務の成果をまとめた部署内の新人発表会がありました。

メーカーの開発部門なので、それこそ学会発表的な、技術の研究発表ノリ的な、カッチリとしたものをやらなければならず、パワーポイントで15分程度のスライドを作って、普段は作業着だけどこの日はスーツで発表、みたいな、わりとめんd、カッチリフォーマルな感じでDo it now! して、ようやく肩の荷が下りたというか、肩の荷がポーン!とFly awayしたのでした。


わりと自分的に死にもの狂い方面のがんばりを、5月は特に決行していたので、なんとか奇跡的に満足のいく発表ができました。し、話したことのない別グループの先輩とかにも発表よかったよ的ななんらかの示唆をいただいたりしちゃって、うっかりいい気分になってしまいました。ていうかそんなことよりも、普段あまり面と向かってほめるとかしないような所属チームの人たちが自分のことのようにうれしそうにして(いるように見え)たことが、くやしいけど自信につながってしまいました。ぐへへ。

 

いやはや大きな目標がひと段落して、少し燃え尽き症候群ですよ…なんて思っていたのもつかの間、次に市場に出さねばならない製品の納期的に大急ぎで図面を作る必要があり、猫の手も借りたい状況にて、ニャ~ンとサワライの手で進めるノロマな作業も求められる始末。まったく、やれやれだぜ。

なんて悠長な感じでもないですが、自分の微力でもお手伝いできることをガムシャラに着き進めている、そんな6月前半でございます。
もうちょっとしたら落ち着くと思うんだけどな~。必死必死。

 

でもまあ合間みておいしいものを食べに行ったり映画も見に行ったりできていて、なんとなくバランスをとれている気になっています。


映画は「ズートピア」と「殿、利息でござる!」をみましたが、どっちもめっちゃくちゃよかった。
ズートピア、差別的な現象の切なさに目をそらさず、かつ説教くささもなく、物語としてスッと入ってくるのすごかった。そのうえハッピーな気分にもなるなんて!
殿、利息でござるは、コミカルと人情の最強マッチング。そりゃ間違いないよ。阿部サダヲだしね。瑛多とツマブッキーかっこよすぎ!そしてハッピーに終わる!キャッホウ!


最近読んだ本で面白かったのは、川村元気さんの「理系に学ぶ」。
文系の著者が、今ホットな理系の人(ニコ動とかユーグレナとかラインとかのトップの人)にインタビューをしていくんだけど、業績のすごい人はその人の生き方とかしゃべり口がすでに面白い、ってところが発見でした。科学の最先端の話を知れるのももちろんこの本の良さだけど、その人のパーソナリティーに分け入っているところがよい。

理系って、無機質というか人情に乏しいイメージが先行してしまうこともあるんだけど(理系のサワライ自身、理系に偏見がある)、冷静に見える科学技術の背景にもアツいストーリーが流れていることが感じられたのがよかったな。

そしてどうやらみんなのインタビューを総合していくと、文系だの理系だの分けて考えることにそこまでたいそうな意味合いは必要ないと感じていくようになります。

たくさんの理系の方々にお会いすることができて「理系と文系は同じ山を違う道から登っているだけだった」ということに気づきました。人間にとって「幸せとは何か?」「美しいものとは何か?」を、理系はサイエンスやエンジニアリングを通して、文系はストーリーやアートを通して追及している。

ということに著者は思い至り、理系と文系の融合が理想形かも、というような結びだと感じました。

理系のサワライも、ブログで文を書き続けていきたいなあと改めて思いました。

 

あとは松田青子さん、吉本ばななさんのエッセイ集と、柚木麻子さんのセックスレスの夫婦の小説とか面白かった。笑


ドラマはゆとりですがなにかが最&高。ここにきて岡田将生さんのよさがわかってきてしまったかもしれません。安藤サクラさんめっちゃ好き!

バンバン不倫する不機嫌な果実もこんなにいい男がポンポンほんとにくるのか!?とか言いながら結局最後までみてしまったー。

といった感じです。
もう俗っぽくてめちゃくちゃです。わははは。

 

健康で文化的な最大限の生活、目指していきたいところです。ガハハ。


あしたは月曜ですかあ。
そうですか…。
おおー!武者震い!!!ひゃははははー!(ここで虎に変身して走り出す)

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39、私たちが武者震いする108つの理由

本屋さんへ行くのが好きです。

amazonでワンクリックして家に届けてもらう便利さも
もちろん承知の上で、たまに利用もするのですが、
本屋で「あれも気になるこれも気になる」っていっぱい買いこんで、
ズッシリ重い紙袋を家に持ち帰る行為が、なによりサワライに満足感を与えてくれるのです。


前にも書きましたが、所有欲をしっかり満たしてもらいたい俗物なサワライは
電子書籍よりも紙の本派です!

sawaraimamoru.hatenablog.com


自分の本棚に本が増えると、賢くなった気になるし!笑
なんだか「知識」とか「センス」みたいな捉えどころのない概念が、
持っている本の数で数値化されるような錯覚が味わえるんですよね。ゲヘヘ。

最近は読書する量よりも、ふらっと気になって買う本の方が多くて、
どんどん未読の本が増えていく大変けしからん状況ですが…。
いや、でも自分の稼いだ金で買ってんだこっちは!
自分のペースで読めばいいんだよこのスットコドッコイ!

 

昨日は新宿まで出かけたついでに、紀伊国屋書店ブックファーストと、
大型書店をハシゴしました。

いつもは小説コーナーで好きな作家さんの作品を探すことが多いのですが、
今回は、電子回路工作とか、専門書の置いてあるコーナーに足を踏み入れてみました。
(一応サワライはメーカーで回路設計とかしています)


実は、先週職場で、サワライがお慕い申し上げているかっこいい上司(40)に

「資格の勉強しようと思って参考書いっぱい買っちゃったんだよ~」

とかなんとか話しかけてもらっちゃって、
それもすんごいナチュラルな感じで、
なんなら仕事の息抜きに新人サワライくん話し相手してくれよ的な雰囲気で話しかけてもらっちゃって、
なんかその気さくに話しかけてくれた感じがものっそい嬉しくて、

「…す、、そ…そんなん、サワライも、なんか参考書買います!勉強します!もっと役に立てるようになりたいです!デュフw
な、なんかいい入門書みたいの、あ、あったりしますか!?デュフwデュフフwデュッセルドルフwww」

とか勢いに任せて言っちゃって、意欲的で勉強熱心な新人と都合よく解釈していただけたようで、上司もなんだか嬉しそうで、それ見て笑って楽しいね、って優しい笑顔にまた癒されてベタボレ♪(湘南乃風純恋歌」より)
という感じでその後、かっこいい上司とめくるめく参考書検索タイムを過ごしたのでした。


イケメン教師に恋した女子中学生が勉強がんばっちゃう!
とか今どき少女漫画でも通用しない陳腐な設定、みたいな感じになってしまっていて、
本当に気持ち悪いやらお恥ずかしいやら…。

でも、これも前にも書いたけど、
身近な人に対する「いいな」と思う気持ちを、肯定したいです。

sawaraimamoru.hatenablog.com


高校の同級生とかに対して必死に考えないようにしていた
「素敵だな、この人に気に入られるようにがんばりたいな」という気持ちを、
今なら仕事に励む原動力にキチンと変換できる気がするんです。
忙しい上司のために少しでも早く一人前になって、役に立ちたい!
上司LOVE!
最高にピュアで不純な動機です。
これを肯定できる自分に、なっていきたいです。
見返りなんか求めません!無償の愛!非暴力不服従!(?)


とまあそういう経緯でして、昨日のサワライは専門書コーナーで
回路に関する本を鬼の形相で必死に選定してきました。

一応、大学で電気系の勉強を一通りして研究とかもしたはずなんですが、
企業の開発現場で必要な知識は途方もないし、
っていうか普通に意味わかんないし、
入門書的なのをいくつか買いました。
技術の専門書は会社の経費で落ちちゃったりするので、
あれも、これも、とついついたくさん買ってしまって、
なんとも重たい紙袋をぶら下げて、家路に着きました。

この重さでいつもは物欲を満たされるわけですが、
今回は愛の重さまで加わってますからね…。デュフフw
ってマジで重いなこんな人間…。きもすぎ…。

っていうか会社以外で勉強とかまじダルいし勘弁~
って感じは正直あるはあるんですけど、
も~、こんなけいっぱい参考書買ったらやるしかないっすね!
自分、上司LOVEなんで。ウス!

 

俗っぽい恋愛感情と、高尚な向上心は、果たして両立するのでしょうか。
ほどほどに、がんばろうかなと思います。

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29、今年の感想文、今年のうちに

今週のお題「年内にやっておきたいこと」

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せっかくブログをやっているんだから、読んだ本の感想を記録しておきたい、と前々から思っていた。

しかし、感想を書きたくなるほど素敵な本に対して、自分のとっ散らかった残念な文章をあてがうのもいかがなものか…ていうかちゃんと感想文書くのはめんどくさいし…などと言い訳をしては先延ばしにしてきた。

そんなところに出会った、「これは何が何でも感想を書かなくては!」と思った一冊の本。加えて今週のお題「年内にやり残したこと」。

sawaraimamoru.hatenablog.com

昔から感想文苦手なんだけど最近読書にハマっていて~、とブログに書いたばかりだし、ちょっと挑戦してみようかな!

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読んだ本:
「名前も呼べない」
伊藤朱里 著
筑摩書房

www.amazon.co.jp

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世間の常識を、うっとうしく感じることがよくある。

「会社員になったからには、早く結婚して子どもを作るべき」だとか、
「彼女がいない男は合コンに行きたいはず」だとか、
多くの男性が分かち合う価値観を、ゲイである私は共有できない。

もちろんゲイでないストレートの人が結婚をプレッシャーに感じることもあるだろう。「料理のできない女はダメ」とか「男は泣くな」なんて古いタイプの考えもまだまだ根強かったりして、多くの人が、世の常識に息苦しさを覚える場面に出くわすと思う。

そういう時私は、自分だけが黙ってこのモヤモヤを飲み込めば、その場は何事もなく済むのだからと、周りに調子を合わせてしまう。口には出さないけど、気にしていないわけじゃない。すると少しずつ心の中に何かが沈殿していき、一定量が積もってからやっと、それはハッキリとつらい感情になる。


「名前も呼べない」の主人公・恵那も、周囲の当たり前に疑問を感じつつ、曖昧に笑って誤魔化すことに精いっぱいだ。
社交的ではないが、元職場の暗黙のルールには律儀に則って女子会を主催し、退職者へのプレゼントの用意なんかもしっかりとこなしてきた。自分が見送られる側になった最後の女子会でも、周知のサプライズプレゼント演出にきっちり対応し、ためらいながら流行りの入浴剤を受け取る。湯舟に浸かる習慣がないのに、冗談でも口に出せない。そんな彼女に、私は好感を持った。

最後の女子会で、恵那は、恋人に二人目の子供が生まれたことを知る。
契約社員として入社してすぐ、どちらからともなく始まった不倫関係だったが、次第に連絡は途絶えがちになり、二年半の期間満了の頃にはふっつり会う機会もなくなっていた。
三か月の間を置いて開催された送別女子会で間接的に知ることになったその事実を、恋人にメールで確かめ、ようやく終わりを意識した。

自分のことなのに、どこか他人事のような恵那の代わりに、機関銃のごとく怒りを表現するのは、彼女の唯一の親友・メリッサだ。典型的なゴスロリファッションで女装をする、その男声の持ち主に対してだけ、恵那は弱音を吐くことができる。

 

「最初からやんなければよかったって言われたら、その通りなんだけどね」
*****
本来なら、私のほうが拒むべきだったのだろう。
でも、あの人が私の前でだけ、仮面を脱ぐとまではいかなくても、ぴったりとその顔を覆う、家庭人とか職業人とか、様々なレッテルの隙間から一瞬だけ素顔を覗かせ、息をついて、またあるべき所に戻っていく、その様子を見ると、単純に世間体を気にして拒否するのが正しいとは、どうしても思えなかった。
少し休んでもらう役割をしたいと、それでいいと思っていた。あの人の帰る場所を壊したり、邪魔をしたりする気にはなれなかった。むしろ応援しているような気持ちでいた。
*****
「ねえ、私、どうしたらよかったんだろう?」

 

そんな恵那の心からの問いかけに、答えなんてあるのだろうか。
「いるだけでずーっと説明を求められる」から言語化が得意な頭のいいメリッサでも、答えてくれなかった場面が印象に残る。

 

料理をしない恵那の住まいの、ほとんど何もない流しの下には、梅酒の浸かった大きな瓶がある。琥珀色の液体から小さな球体が息苦しげに青い肌を覗かせているという描写が、不気味なのに美しいと思う。
距離ができていく直前に、恋人の指導のもと一緒に作った。
「最低でも一年は寝かせないと」と言う恋人に「待ちきれない」と言いながらも、一年は一緒にいてくれるつもりなのだと信じた恵那。そして今も信じたがっている自分に苦笑する恵那は、とても健気で、危うい。
その恋人の残していった梅酒の大瓶を、時折引っ張り出しては中身をのぞき込む。すると、まるで預言者が水晶玉に未来を見出すように、恋人の家庭の様子が、瓶の中で幻の像を結ぶのだ。

琥珀色の中に映るのは元職場の宝田主任と、妻の亮子さんの家。実は他ならぬ宝田主任の紹介で亮子さんのピアノ教室に通っていた恵那は、二人の家に行ったことすらあるのに、淡々と客観的に梅酒の瓶を眺める。
そんな恵那がクライマックスにかけて、感情をむき出しにしていく過程が、すごい熱量で書かれていく。
自己中心的な、そこらへんの愛人にはなりたくないと言っていた恵那が、恋人に電話で思いの丈をぶちまけるラストに、私は解放を感じた。

 

常識ってなんだろう?
○○してはいけない、とか、○○なはずだ、とか、なんだろう?
「ねえ、私、どうしたらよかったんだろう?」


たぶん、答えはない。
でも、私は最後に、恵那が進み始める微かな希望が見えた気がする。
「あんな一生涯が砕け散るような遣り取りがあっても、充電は爆発したり磨り減ったりなくなったりはせず、減る分は減って残る分は残るのだ。」

 

大丈夫。まだもうちょっと、進んでみよう。

 


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「何者」など、価値観のどんでん返しが得意な朝井リョウさんオススメということで、手にとってみた第31回太宰治賞受賞作。上記のように長々と書いてしまいましたが、この本には大きな仕掛けがあって、実際に本を読まなきゃ絶対に味わえないので、是非読んでみてほしい!!飛び出す絵本とか、そういう仕掛けじゃないよ!とにかく読んでくれ!伊藤さんは朝井加藤オールナイトニッポンパトロンということで、個人的に目が離せない!