あるゲイのサワライ マモル。

東京、会社員、ゲイ

60、右手に剣を、左手に生首を

床屋から美容室へと、少年は階段をのぼった。

もう10年以上も前のことになります。
ワックスで頭をツンツンさせた中学の同級生に教えてもらい、地方の田舎にはめずらしいガラスばりの建物に初めて足を踏み入れたあの日の緊張は、今でも鮮明です。

「す、すっきり短めにしてください。」という漠然とした注文をなんとかしぼりだし、美容師さんの「部活、やってんの?」というあたりさわりのない質問に必死で答え、背伸びして手に入れたいつもより少しだけオシャレな髪型。帰りの親の車に乗り込むときの窓ガラスに映った、いつもと違う自分にほんのりと舞い上がった。

店先での丁寧なお見送りを照れくさく思いながらあとにしたそのお店は「サムソン&デリラ」という名前だったのですが、なんだかよくわからないカタカナの羅列も、かっこよく感じられ、興奮に拍車がかかりました。

 

なつかしい地元の美容室の店名を急に思い出したのは、東京の美術館で「サムソンとデリラ」という同じ名前の絵画を発見したからでした。

えっ!?と驚いて近くの解説を見ると、旧約聖書に登場する「サムソンとデリラ」という物語を題材にした作品、とあります。
美女デリラの膝枕で眠る、怪力の策士サムソン。
一見、相手を愛おしんでいるかのように見えるデリラの手元にはハサミが光り、サムソンの怪力の源である髪の毛を切ろうとしている場面らしい。サムソンのことをよく思わない連中に買収されたデリラの罠。のどかな膝枕カップルの第一印象がひっくり返り、女の誘惑に屈する男という構図が見事でした。


解説を見て、絵の構造が理解できたとともに、
「そうか!あの美容室の名前は、髪の毛にまつわるこの物語が元ネタだったのか!」
となんだかこの世の真理を見つけてしまったかのような、名探偵にでもなってしまったかのような、猛烈な気づきがあったのでした。


あの長ったらしい名前は、けっしてデタラメに決めたものなんかではなかったんだ。
粋!おしゃれ!目の前の歴史的な名画をそっちのけに、地方都市にも細やかに出店している美容室チェーンに思いを馳せたサワライだったのでした。

 

 

www.tbs.co.jp

年末の休みに、上野の国立西洋美術館でやっていた「クラーナハ展」にふらっと行ってきたんです。
ドイツ・ルネサンスを代表する芸術家であるらしいクラーナハさんの作品が拝めるのですが、さっきの「サムソンとデリラ」みたいな、女の誘惑に弱い男コーナーが面白かったな。
神話の英雄ヘラクレスが女神たちに囲まれてただのスケベオヤジみたいなゆるみきった顔になっている絵とか。

ていうか展示会のポスターにもなっている、剣を持った「ユディト」という女の人の絵、涼しい顔して男の生首持ってたからね。
首の断面まで生々しく描かれていて、まじかよ、といった感じで引き寄せられると、どうにもこうにも「凛としている」ユディトの雰囲気が、もしかして素敵なのかも、と思えてくる、そんな作品でした。(グロいの苦手なので最大限の譲歩)

 

クラーナハ展が2016年の美術館おさめでした。
2017年も、美術館ちょっとずつ行きたいなあ。
そんで、ふ~んって感じでうわべをなでるようにカジュアルに楽しんでいきたいです。

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59、2016年、僕の私の大量消費社会

お久しぶりです!サワライ マモルです!

 

光陰矢の如し。加齢とともに年々加速する「今年もあっという間だったね」感。

サワライ的には毎度のことですが、2016年、今年もなんかオロオロしてるうちに過ぎちゃったなあという印象です。

 

仕事、うまくできないし、彼氏、微塵もできないし、去年に引き続きウロウロしてたサワライが、ギリギリのところで正気を保つことができたのは、エンターテイメントのおかげでした。

 

 

というわけで、サワライを救ってくれた2016年のお気に入りご機嫌コンテンツを以下に紹介していくぜ!独断と偏見だぜ!今年もいっぱい好きが増えました!

 

 

 

~小説~

 

●「美しい距離」

 

美しい距離

美しい距離

 

 

 不治の病の妻とその夫の日々。難病ものって、お涙頂戴の感動作で片付けられてしまいがちですが、この作品はもっと淡々としています。おおげさじゃないからいい、というか。それは決してうすっぺらいわけではなく、静かにしっかりと、死を自分たちのものとしてとらえていく夫婦の姿が美しく描かれていて、すごくよかった。

最後に、妻の死により妻との距離が日ごとに離れていくことに対して、それもまた乙なものだと、夫が肯定する描写がすごく印象に残る作品。

 

 

 

●「コンビニ人間」

 

コンビニ人間

コンビニ人間

 

 

大学卒業後就職をせずに、ずっとコンビニでバイトを続ける36歳未婚女性の話。幼い頃から周りの人の「普通」に寄り添えない彼女は、完璧なマニュアルが存在するコンビニでだけ自分が世界の「部品」になれると、コンビニのために眠り、コンビニのために食べる生活を送る。そんな極端な彼女の姿に、世間の常識からの解放をみるか、あるいは狂気を感じるか…

身近なコンビニを舞台に、常識や価値観を激しく揺さぶられる楽しさを味わえます。

 

 

 

●「みかづき

 

みかづき

みかづき

 

 

 昭和から平成にかけて、塾産業とともに歩んできた家族三世代の大長編。

キャラがみんなめちゃくちゃ魅力的で、教育をめぐる展開がとにかくアツいんです。

気の強い女性にタジタジなおおらかな男の構図とか、個性豊かな三姉妹のそれぞれの活躍、超然としたかっこいいおばあちゃんなど、好きな人物像が次々に出てくるのがお気に入り。

 

 

 

~映画~

 

●「怒り」

映画『怒り』公式サイトwww.ikari-movie.com

57、「怒り」にゆれる喜び - あるゲイのサワライ マモル。sawaraimamoru.hatenablog.com

 

ブログも書きましたが、人を信じること、生々しい感情が描かれた作品。心がグワングワンに揺さぶられる骨太な仕上がり。妻夫木くんに恋をし、宮崎あおいの幸せを祈る映画。

 

 

 

●「シン・ゴジラ

映画『シン・ゴジラ』公式サイトwww.shin-godzilla.jp

 

怪獣映画というか、会議映画でした。

未曾有の大災害発生時に、国の頭のいい人たちがどのように動くか、というのを、エヴァ的なスピード感ある画面の切り替わりでテンポよく展開していく心地よさ!豪華俳優陣をエキストラ的に使ったり、街の作り込みがすごかったり遊び心も満載で圧倒的なエンタメりょくでした。

 

 

 

~ドラマ~

 

●「ゆとりですがなにか」

ゆとりですがなにか|日本テレビwww.ntv.co.jp

 

岡田将生松坂桃李柳楽優弥演じるゆとり世代が、うるせー馬鹿ヤローゆとりだなんだ関係ねえんだよといった感じで、宮藤官九郎脚本特有の独特な長い感情的なセリフをまくしたてる感じが大好きでした。うっかり岡田将生のよさを悟ってしまった作品。ヒロインの安藤サクラさん最高。

 

 

 

●「逃げるは恥だが役に立つ

火曜ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』|TBSテレビwww.tbs.co.jp

 

個人的に自信をなくしていた秋口から冬にかけて、毎週楽しみに、心の支えにしていたドラマ。

派遣切りからの就職としての偽装結婚、からの本当の恋。現代が抱える社会問題の捉え方が絶妙に丁寧で、職業観とか、特にジェンダーの考え方が大げさでなくフラットで、すんごくよかった。

物語に散りばめられた色んな番組のパロディも最高に面白くて、キュンとするシーンも満載で、最高&最&高でした。

星野源、別にそんな好きじゃないんだけど、なんか、みちゃうんだよねえ…いや、別に好みじゃないんだけどなあ…という謎の言い訳を続ける自分のちっぽけな存在を意識せざるをえない作品。

 

 

 

~歌~

 

●「Have a nice day / 西野カナ

 

Just LOVE

Just LOVE

 

 

 4月~9月のめざましテレビのテーマソングでしたね。生まれながらのめざましテレビ派な自分の、会社への行きたくなさを見事に払拭してくれる最強おはようソング。ウキウキなメロディーとともに繰り出されるかなやんの底抜けポジティブ歌詞が最高。

トマトが嫌いな歌でレコ大おめでとうな西野カナやんは、ホントに歌がうまいんすよね。YouTubeでの強いかなやんのTrue Colorsも好き。

 

 

 

●「ともだち with 小袋成彬 / 宇多田ヒカル

 

Fantôme

Fantôme

 

 

 宇多田ヒカルの復帰アルバムはみんなチェキラウトした?サントリーのCMの道、も大好きなんだけど、やっぱりゲイのことを歌ったとされるこの曲をいっぱい聴いたなあ。触りたくて仕方ないあなたとは、やっぱり友達になれないなあ、とのこと。イントロとアウトロのメロディーがめっちゃかっこいいんだよね。

 

 

 

●「恋 / 星野源

 

恋

 

 

 言わずと知れた最強ドラマ逃げ恥のテーマソング。

ダンス習得の日々。

主演のガッキーの激キャワな恋ダンスもいいけど、星野源が歌番組で歌う時のバックダンサーのキレキレな恋ダンスも大好き。

てかこの曲めっっっちゃよくない!?「ただ腹を空かせて君の元へ帰るんだ」のとことか!好き!

 

 

 

~ミュージカル~

 

●「1789」

帝国劇場『1789 バスティーユの恋人たち』www.tohostage.com

 

46、革命日和 - あるゲイのサワライ マモル。sawaraimamoru.hatenablog.com

 

ブログにも書いたフランス革命のミュージカル。神田沙也加の声の力・健気なヒロイン像、小池徹平の少年漫画的ヒーロー像、ソニンの情念、農民の魂からの訴えを表す合唱・群舞。もっかいみたいなあ、いつか再演してくれないだろうか…

 

 

 

●「キンキーブーツ」

ブロードウェイミュージカル「キンキーブーツ」公式サイトwww.kinkyboots.jp

 

三浦春馬ドラァグクイーンを演じた異色作。三浦春馬がもはやドラァグクイーンでしかなく、圧倒的な強さ・美しさがかっこよかった。女性性と筋肉の両立、が斬新で、でもめちゃくちゃ説得力のある強さだった。

 

 

 

●「RENT」

ブロードウェイ・ミュージカル『RENT(レント)』20周年記念ツアー来日公演rent2016.jp

 

今週みてきました笑

マイノリティーや麻薬中毒エイズなどに焦点を当てたブロードウェイミュージカル。

初めて海外キャストのものを観てみましたが、歌かっこいい!最高!

舞台の両サイドで字幕がちゃんと出るんですね、慣れないとちょっと忙しない笑

なんかのCMでもおなじみの「Seasons of Love」が本当にいい歌すぎて、ソロの人うますぎて、鳥肌ののち涙。よかった。

 

 

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という感じでした2016年!!

来年も色んな楽しいものを、俗っぽく消費していきたいなあ!

スマップがいなくなっても、強く生きていくからね。

 

 

やべえ、紅白始まる!!消費せねば!!

 

58、ペンパイナッポーClap your hands.

久しぶりにブログを書く。緊張している。
そういうぎこちなさも、味があっていいのでは?
という価値観が存在する仮想世界の設定で、読んでいただきたい。

 

10月は、仕事が忙しかった。


こう短く言い切るのには抵抗がある。
忙しい=充実アピール、になることを極端に恐れている。

自分はそんなすごいことなんてまったくしていない。

ただ感覚的な話として、この10月は、普段やっている業務と少し毛色の違うことをする必要があり、それに対応するのにいっぱいいっぱいで、焦ってばかりだったな~という感想。

会社員歴1年半という区切りに、少しは余裕が出てきそうになったかなと思ったのも束の間、「そんな甘くねーから!」と、頭上に金ダライが落下してきた気持ちだ。

 


メーカーの開発職ということで、まあわりと実務で、先輩に業務内容を教わっていく中で専門技術を身に着けていきましょう、という普段の感じなのだが、3週間ほど所属の職場を離れて専門技術の講義・実習を受けるチャンスがあり、幸運にも受けさせてもらえた。

今はまだ実務では任せてもらってないが、職場でも必要な技術で、絶対に役に立つはず。が、いかんせん覚えることが多く、難しく、研修は困難をきわめ、くらいついていくのに必死だった。

そんな中、研修後すぐに、初めての海外出張に行くことが決まり(実務で)、研修と並行して出張の準備を進めることになり、頭がパンパンだった。

もともと2つのことを同時に並列で進めることが苦手なタイプだ。
就職活動の時なんかは、「1つのことにまじめに、コツコツ成し遂げるタイプです☆キャピ☆」なんてお茶をにごし放題だったが、仕事ではそうは問屋がおろしポン酢。
困るのは自分だから、なんとか準備にモレがないよう気をつけメールで連絡などしつつ、技術研修もわからない点をコソコソ人に聞きながら、考えて、習得できるよう奔走した。


そうしてなんとか研修のゴールを迎え、息つく間もなく向かった初の海外出張先で、精神的につらいことがあった。

 

要点を言えば、営業さん交えた飲み会になり、普段の開発だけの飲み会では比較的少ないゴリゴリの男性社会的な話の流れにまったくついていけず、うまくかわすこともできず、心が死に絶え、ただただ曖昧な笑顔を浮かべながらうなずき続ける赤べこ(福島県の名産品。赤い)になってしまったという出来事があった。


男性社会的な話って何かって、まあ、海外出張といえば風俗、みたいな、若手はヤンチャして一人前、みたいな話。

どうも話を聞いていると、やっぱり、仕事内容という共通項だけでトークが続くわけもなく、出張先でわりと普段関わりの薄い人も同席して、交流を深める必要がある場で、何か、共通項目でみんなのコミュニケーションがうまくいくようにするためには、これだ!って、必殺の、鉄板の、みたいな流れで風俗の話。という感じだった。

 

自分はゲイなので風俗とか興味ありません!とは口が裂けても言えなかった。
だって、せっかく盛り上がる交流のキーワードなんだから。
このテーマで、コミュニケーションが円滑に進むに決まっているんだから。

 

しかも、なんなら、会話の主導を握る40代ぐらいのオッサンたちが、あくまで自分たちは家族もあるし最近はめっきり風俗とかご無沙汰だけど、若い人たちは、ねえ?笑
みたいな、ちょっと無理する感じで、もう、無理するくらいなら、よくない?もうやめない?ってなる感じだったけど、でもじゃあ、なにか話題を提供できるわけでもなく、ただただ、風俗がその場の正義だった。そして、残念ながらたぶんきっと、2016年の日本社会において、「若い男性社員は風俗好きでしょ?笑」で円滑に進む組織がいっぱいあるんだと、漠然と感じた。

幸い、実際に風俗に連れていかれる、なんてことはなかったが、どうにもこうにもつらかった。怖くなった。
「ヤンチャ」とか、「オネエチャン」とかいう単語、本当に無理。なにその共通言語。


日本の企業はこういうふうに、非常に簡素化された男性社会を確立して、マンパワーを結集させて、ドーピングして、高度経済成長を成し遂げてきたんだなあとなんとなく思って、なんか途方もなくて、女や、LGBTが、本当に平等になることなんてあるのかなって、とても気弱になってしまった。
ここまでシステムが確立してしまった上で、今さらドーピングなしでやっていけるの?っていう。

 

もちろん急速にLGBTの話題がホットになりつつある時代の流れも確かに感じているけど、みんなの価値観を変えるのって、すげえ大変だよな~って、すごく怖くなった。

職場が普段一緒で、少しずつだけど仲良くなり始めた周りの先輩たちが、今回の営業さんたちと同じ感じなのかなって、想像するのが怖かった。(普段あまり下ネタ的なこと話さない)

 


自分が上記のように主張していることは、おそらくセクハラ、という言葉に置き換えられると思うけど、その旨が伝わる人は会社の中に一体どれだけいるんだろうか。


ていうか自分でも自信がない。自分が我慢すれば済む話のような気もする。
セクハラなんて大げさだって、自分でも思う。
自分の今の開発職場に関して言えば9割9分男だし。
LGBTが~とか突然言える気はまったくしない。
だとしたら、会社はどうやって変わるんだろうねえ~という自分事ながら他人事で、遠い目になってしまう。

 

ニュースとかで、もちろんLGBTの革新的な話題には目を見張るけど、それが末端にいきわたるのって、あとどれくらい待つことになるのかな~って、気が遠くなった。

 

 

そして、そうやってうろたえている内に、今月また海外出張に行くことになってしまった。
普通に別件で体力的に不安もあるので、わりと怖い。

職場の人手不足による、消去法的な人選なので、出発前に覚えることもやるべき作業も満載で、プレッシャーがパない。

そしてそして、おそらくがんばるととてつもなく成長できる気もする。ここが厄介だ。なにダメ人間のくせに仕事にやりがい感じてんだよ。みたいな。


もうでも、流れに身を任せるしかない、という感じ。はぁ~あ。


「海外出張なんていいじゃん!チャンスだし!」という声ばかりなので、弱音を書き記しておく。がんばれがんばれ。

 

あー!ていうかクリスマスまであとちょっとしかないのに出張とかしてたらイケメンに出会えねーじゃねーかクソが!というのが本音。はははうんこうんこ

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57、「怒り」にゆれる喜び

映画「怒り」を観てきました。

www.ikari-movie.com


ある残忍な殺人事件の容疑者が、顔を変えて逃走中の日本。
東京、千葉、沖縄の3つの舞台にそれぞれ、素性の知れない謎の男性が現れます。
そんな男と近づくのは危ない、なんて明白だけど、心の葛藤を内に秘めた登場人物たちが何かに惹かれ心を通い合わせていく、という共通の道を3つの物語がたどります。

よくわからない部外者にだからこそ、さらけ出せる本当のことがある。
こんな自分を信じてくれたこと、教えてくれたこと、全てを大切にしたいと思う。

でも。もし、殺人犯だったら?
事情があって言えない過去、信じたいあの人がひた隠しにする大切なもの、それを信じてあげたい。
でも。もし、殺人を犯したという過去だったら?

大切なことを教えてくれたこの人を、本当に信じていいんだろうか。

そんな疑心暗鬼をテーマに、豪華俳優陣が極限の繊細な演技で表現する映画でした。

 

場面が交互に切り替わりながら、並列で物語が進んでいきますが、3か所の登場人物の間で接触は一切ありません。
しかし、別々の場所の別々の人の感情のゆれ動きが、ところどころリンクして進んでいくので、自然な流れがあるし、というかむしろ3つの場面が次々と展開されることで加速して、ストーリーが出来上がっていきます。
3つの映画を観たようなボリュームがありつつも、やっぱり1つの完成された作品なんだと思いました。

 

個人的には、3つの舞台の中で東京編への思い入れがやはり強いです。
妻夫木聡演じるゲイが、素性のわからない綾野剛とカラダの関係から恋人になっていく話。

これってやっぱり、現代日本の、ゲイの匿名性みたいなものが、「怒り」の物語を成立させるのにとても都合のいい装置というか、親和性が高いってことなんだよなあとしみじみ思いました。

サワライはめちゃくちゃ貞操観念が保守的なので、見ず知らずの人同士でいきなりハッテン場でセックスから入る、ってもう全然想像できないんですけど、そこまでいかなくても合コンとかアプリで出会うゲイの本名なんて、まずわからないです。自分も適当なニックネームしか言わないし。

ある意味、相手の得体が知れなくて当然なんですよね、ゲイの出会いって。少なくとも日本の現状では。

そんな緊張感のある最初の出会いから、自分のことを話して、相手のことを聞いて、って交流していくと、ちょっとでも共通項がある時にめちゃくちゃうれしいんですよ。めちゃくちゃホッとするんですよ。
そして逆に、いくらでも消えられます。アプリのメッセージが途切れてしまえば簡単に会えなくなったりもします。

風が吹けば飛ばされそうなつながりから、始めなくてはいけない。
だからこそ本物にめぐりあえたとしたら、それは尊い。
信じる力と、誠意が試されている気がします。
疑り深くて自分本位なサワライは、どう振る舞えばいいのかいまだによくわかっていません。

わからない。わからない。
わからないけど、だけどきっと、恋人ができたら。
想像がつかないほど心がゆれるんだろうなあ。
それは傷つくことかもしれないし、幸福を感じることかもしれない。
かき乱されるんだろうなあ。よくわからないけど。

 

そう、「怒り」を観ると感情が揺さぶられます。
それもとても苦しくなる揺れ方。体力が消耗する、そういう種類の感じ方。

仮に登場人物の、一見して自分とは別世界だと思うような突飛な闇に放り込まれたとして、ああ、でも自分もきっとそうせざるを得ないかもしれない、と思う。
無関係なはずの、作り物の世界であるはずの画面の中で苦しむこの人のこの感情の動きは、確かに今、自分も一緒に体験している気持ちなのだと、そう信じさせてくれる作品に、自分はたくさん触れたくて、「怒り」は本当にそういう映画だったと思います。

 

原作の小説を読んでも思ったし、今回の映画ではさらに俳優さんの最高の演技(渡辺謙の語りの目の泳ぎ方、マジですごかった)、映像美(どこを切り取っても鮮やか)、音楽(坂本龍一だったっけな?)で、世界観がさらに広がって、追体験の度合いがものすごかった。めちゃくちゃ脳内に映像がこびりついて、情報が流れ込んで、家に帰ってもゆれっぱなし。というか、普通にズーンと気分が落ちた。それくらい疲れました。それくらい、動揺しました。本当にそれって、面白いものが観れてよかったなあということだと思います。
多分もっかい観に行きます。気合い入れてまた観に行く。
ちょっと、だいぶ大げさに書いているから、ハードル上げすぎていたらすみません。
※あくまで個人の意見ですからね!

 


ていうか書きながら、「それっぽいこと書き散らかしたかったけど、彼氏いないとなんにも説得力のない、中身のない、ペラペラなことしか言えないなあ…」ということに気づいてしまって、なんかもうすいません…って文章がガス欠を起こしました。無念。


そうですね。これは、マジでイケメンのかれぴっぴ出来てから「怒り」もう一度ちゃんと観たいです。ぜったいギャン泣きしてやる。映画に感動しながら自分たちの愛を再認識するという過程を経てやる。ギャン泣きできるほど信頼関係を築いたイケメン彼氏と一緒に「怒り」観て、燃え上って流れで激しく抱き合ってやる。って結局そこかい。


てゆーか、こういう深い愛情の物語ばっかり観て変に脳内の「恋愛」の定義がどんどん厳格になっていってしまって、どんどん恋愛のハードルが高くなっていってしまうのってけっこう問題な気がします。


小説や映画ばっかみてないで、さっさとその辺の男とセックスしちまった方がよっぽど自分のためになるんじゃないか、ってまじで時々思うようになりました。

まあでもこういう思考回路って、女子中学生とか女子高生が「クラスメイトのみんなは処女を早々と喪失していてアセっちゃうよ…けど大切な人にとっておきたいし…でも白馬の王子様なんて来るわけないし。やはりとっとと処女は捨てた方がいいのか…?」っていう感じで昔からよくあることだし、30代にもなって処女って変!?みたいなドラマも前にあった気がするし、別にそういう、高齢童貞の自虐でネタにして、というありきたりなものをするつもりはありません。
ただ単純に、もうそろそろいい人みつけてえよ、ってだけです。
ただ単純に、肋骨ボキボキに折れるまで力強く抱きしめられたい、ってだけです。
それだけの話です。

 

唐突に自分語り。

では。

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56、お気持ちを表明する人

祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
電車で見た「ジョリーさんが離婚申し立て」という1行ニュース、盛者必衰の理をあらわす。


あのブラッド・ピットアンジェリーナ・ジョリーだって離婚するこのご時世。
永遠に確かなものなんて何もないですよ、そんなもん。
諸行無常ですよ、そんなもん。

てゆーか「ジョリーさんが離婚申し立て」という字面、面白すぎだろ。
ジョリーさんって誰やねん、と全米が総ツッコミしたとかそうでないとか。

そもそも誰も呼んだことないでしょ、ジョリーさんなんて。伝わりづらくなっちゃってるよ。
見出しの字数制限的にアンジェリーナ・ジョリーは長すぎる、ということはわかるけど、アンジーとかでよかったでしょ。ワイドショー感が出ちゃうと、チープな雰囲気でイヤだから?しっかりしたニュースであるとアピールするための苗字+さん付け?だとしたら完全裏目に出てる。ジョリーさんはマヌケな感じがする。
まあ写真も一緒に表示されてたし、話題になってるからすぐに理解できたけどさ。別にいいけどもさ。

やっぱり、アンジェリーナ・ジョリー、とフルネームでの表記が一番気持ちいいよね。
さすがは声に出して読みたい女優の名前・第2位。
1位はもちろん、ミラ・ジョボヴィッチ。

 

そんなわけで、時の流れに圧倒されている。
もう、9月終わっちゃいそうなのか?ついこないだまで暑い暑い言ってたのに。
なに急激に冷え込んでんだよ。なに急激に季節移り変わってんだよ。


会社員2年目も半分過ぎる?こんなに何も成長してないのに?
2016年が4分の3過ぎ去ろうとしている?彼氏が出来そうもないのに?
年末にはSMAPが解散してしまう?「もともと特別なオンリーワン」という最強な言い訳の恩恵を受けまくって、競争社会から逃げてきたというのに?これからは何を信じて生きていけばいい?


(エンタメ的に)社会情勢が混迷を極める中、一般ピーポーなサワライはなすすべもなく、ただ、あーでもないこーでもないと適当で無責任なことを言って、流れに身を任せて漠然と生きていくだけです。
とにかくエンターテイメントを消費したい。
観たい映画がいっぱいです。
「怒り」は完全に観たい。観たさしかない。友達と観に行く約束してるけど気を抜いたらその前に1人で無意識のうちに観に行ってしまいそう。自分が怖い。それくらい観たい。インターネットでの評判の良さが、観たい気持ちに拍車をかける。俳優陣の演技がものすごいことになっているらしい。ていうか妻夫木くんのエロさがすごいことになっているらしい。ていうかもう妻夫木くんを観に行きたいだけかもしれない。いやでも自分、原作の小説読んでるんで。決してそんなミーハーな感じでは…。いや、もうものすごい妻夫木くんの濡れ場が気になるのはまぎれもない事実です。いやでも実際ストーリーめちゃくちゃズーンと来る骨太な感じで、打ちのめされたいんですよ。気合い入れて観に行かなくては。

10月になったら始まる、既婚者こと福山雅治二階堂ふみさんがでこぼこコンビ的な感じの「スクープ」も気になる。
原作小説に打ちのめされた就活ホラー「何者」も完全に観に行く。こちらも二階堂ふみさんがいい役どころだから要チェック。

 

小説が原作の映画って、なんだか賛否両論みたいですね。
小説という形態でしか表現できないことを映像にする意味があるのか、とか。
原作の良さがなくってしまった、とか。
小説版は小説でいい味があるし、俳優さんが人物として動いて映像として膨らむ世界も好きだし、音楽とか、色々無限の可能性もあるしで、俗っぽいサワライはジャンジャン映像化してしまええええって思います。供給していただければ、バンバン消費します!ってなもんです。面白ければ、なんでもオッケー!そのあとは、観る人の選択の自由だしね。


はあ消費活動がしたい。買い物したい。金がいる。働かねば。
でも休日は、休まねば。

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55、消えた手のひらのメモ

台風がやたらと接近する9月。
毎週のように暴風警報say ho---!!って朝のニュースでビートを刻んでいる気がする。それは言い過ぎか。

でも天気が悪い、基本的に。
洗濯物、部屋干しで、もうなんともいえない残念な匂い、たちこめる。

こう天気が悪くちゃ、会社行くのもめんどくさくなるってモンです。
え?いつものことだって?バカ言ってる。

そんな折に、おれのゾッコンLOVEなイケメン上司が1か月の海外出張から帰ってきた。
なんかしらんけどちょっと日に焼けて、若干陽気になってて、よくわからないけど、かっこよさに拍車がかかっていた。

思い出した。ここ1か月、妙に仕事に身が入らなかったのは、低気圧のせいなんかじゃない。あのひとが出張でいなかったからなんだ。今日はめちゃくちゃ仕事がはかどった。後ろの席の気配を感じるだけで、こんなにもウキウキウォッチングで図面が描けるんだ。久々の感覚だった。

ああまいった。完全にその辺に転がっている、凡庸な恋じゃないか。
無意識に目で追ってしまう。話しかけられるだけでドキドキしてしまう。本当にバカみたいだと思う。

そして、同性の子持ち既婚者への恋愛感情なんてあまりに非現実的だし、だからこそ何かものすごく尊い感情なのではないかと錯覚してしまう時もあって、救いようがない。

上司のためにいい仕事をして、役に立てるならそれだけでいい。
そう思うけど、でも、きっとそれだけじゃ絶対に満たされない。少なくともおれは。
見返りを欲している。やっぱり、誰かに愛されたいと思う。

 

先月知り合った人と、今週2回目のご飯に行くかもしれない。
その人に恋愛感情を抱けるのかどうか、まだわからない。
その人が自分に好意を持ってくれるかどうかは、もっとわからない。


ただ、このまま何もしないのでは本当に何も始まらない、ということだけはなんとなくわかっている。
週末は、晴れてくれるといいな。

 

…あ、あの、てゆーかシリアスに書きすぎました。すいません。
要は、上司があまりにおれ好みなルックスで、仕事中つい「上司かっこいいい(ハート)」ってなるし、とはいえ実際問題、彼氏ほしいしゲイの知り合い増やしていこうって思って色々模索中、ってことです。
そんなけのことです。
ありふれた人生の悩みです。
みんなは最近、ちゃんと悩んでる?パスタ、巻いてる?


てゆーかこんなブログ読んでないで、さっさと寝るのが吉。

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54、チャイナドレスをきみに

築地市場の移転先に広がる地下空間での汚染問題へと世間の関心が集まる中、サワライは三連休にうつつを抜かして、横浜の中華街へ出かけてきました。

中華街には、それはもう数えきれないほどの中華料理屋がひしめきあっていて、そのどれもが尋常ではない量の中華料理を生み出し、そして限りない連休の人並みが押し寄せ、消費していくのでした。


大学時代の友人で集まったサワライたち一行もご多分に漏れず、おいしい点心に舌鼓を打って打って打ちまくりました。どうやらショウロンポウみたいな蒸篭で蒸されたお料理ちゃん達と一緒に、香り高い中国茶を楽しむことを指して、飲茶(ヤムチャ)って呼ぶみたいです。中華料理屋の待ち時間で必死にWikipediaで学ぶ。人間、死ぬまで勉強です。

ってなわけで、キンモクセイのいい匂いのする中国茶を頼み、ショウロンポウからあふれ出す肉汁の余韻とお茶とのコラボレーション、といったようなものに、新鮮な心地よさを見出したりしました。
キンモクセイの香りって、時々どぎついトイレの芳香剤を思い出したりする時もあるから、面白いよね~」なんてうっかり言ってしまって、「最低」「台無し」とすっかりひんしゅくを買ったサワライなんかおかまいなしに、次々と運ばれてくる春巻き、チマキ、ワンタンスープ。

今回は6人で食事したのですが、やっぱりこういう中華はワイワイガヤガヤ、おしゃべりしながら大量に食い散らかしていくのが醍醐味ですよね。
プリップリのエビあんが、透き通ったうすい皮につつまれ、真空パックのように中身の詰まったエビ蒸し餃子が個人的なハイライト。
あ、あとコーンスープ!みなさん知ってますか?中華料理のコーンスープのすごさを。コーンポタージュのようなドロッとした黄色い液体ではないんです。とろみのついた中華出汁をベースに、溶き卵が縦横無尽にかけめぐって、宝石のようなトウモロコシの粒が無限に散りばめられた、中華のコーンスープ。めちゃくちゃうまいんです。たいていが大きな椀で頼むようなメニューになっていて、みんなであの幸せの液体を分かち合って、スプーンではなくレンゲでたっぷりとほおばるのがいいんですよ。オススメです。


そうして杏仁、マンゴー、中華風蒸しパンを頼んで、オーダーSTOPです!!とゴチになりますごっこを経て、お腹がいっぱいに満たされたご一行は、山下公園の方へ歩き、大さん橋へとたどり着きました。
桟橋といっても、ボートが泊まるようなかわいい桟橋ではなく、横浜の大さん橋は豪華客船が停泊するようなとてつもない大きさの、ちょっとしたイベント施設でした。木の板を組み合わせたデッキといった感じの床が、なにかしらの競技場ほどの広さで続き、ところどころ芝生も散りばめられ、とてもよいお散歩スポットでした。
ちょうどドデカい豪華客船が停泊していて、歩いても歩いても船の反り立つ壁面しか見えず、圧倒されっぱなしでした。船、っていうか建築物、って感じでした。チラ見えする客室やバーラウンジ、レストランに船上プールから想像される優雅な船旅に思いを馳せ、豆粒のように小さく見える西洋人のお客さんに「このセレブ野郎が!」なんて悪態をついていたら、船体の前方に書いてあった船の名前が「Celebrity Millennium」で、もうなんというか、ぐうの音も出ませんでした。無条件降伏。


圧倒的セレブからの敗北感に打ちひしがれ、帰りの駅へと向かおうと再び中華街に戻ると、露店でゴマ団子や、肉まんなんかが庶民価格で売りさばかれているではありませんか。キャッホウ!あんまりお腹空いてないままだけど食べるぜ!ってなもんで食べ歩き。とても一日では網羅できない種類があったから、また行かねばなりません。

横浜の街は、やっぱりオシャレでおいしい。よい休日でした。

 

※なんも中華っぽい写真撮ってないので、まったく関係ない夏っぽい写真を載せとく

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